研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00039
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 (2022) 神戸大学 (2021) |
研究代表者 |
黒崎 健二 名古屋大学, 理学研究科, 学振特別研究員(PD) (60869519)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 惑星大気 / 系外惑星 / 天体衝突 / 惑星科学 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに観測されてきた系外惑星は我々太陽系の惑星とは質量や半径,大気量が大きく異なり多様性に富んでいることが明らかになっている.このように多様性に富む惑星が存在するのはその形成過程に強く影響していることが示唆される.特に,地球質量から海王星質量(地球の10倍程度)の系外惑星は,木星のような巨大ガス惑星になるかあるいは地球型惑星になるかを形成過程上で分ける天体であるため,形成過程の全容を理解することは重要となる.本研究計画では原始惑星系円盤から獲得する一次大気の消失プロセスを天体衝突および惑星進化両面から検討を進め,天体衝突に耐えて大気を残すために必要な惑星の条件を制約する.
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研究実績の概要 |
原始惑星系円盤内で合体成長を繰り返して形成した惑星は,その形成過程において大気を持っている.この惑星大気はその後の衝突合体のプロセスによって,組成や大気量を変化させることから,惑星大気の研究は惑星形成プロセスを探る上で重要な指標となる.特に近年発見数が急激に増大した系外惑星に注目すると,惑星の大気量や組成は原始惑星系円盤を由来とする水素主体の大気だけでなく,水などの重元素を含んだ大気を持つ天体など多様性を持つことが明らかになっており,地球質量から海王星質量程度の系外惑星が持つ大気量は多様性があることが知られている.これらの質量域の惑星の大気量が多様性に富むのは様々な形成プロセスがあり複雑であることを示唆しているが,このような惑星は巨大ガス惑星になるかあるいは地球型惑星になるかの分水嶺となる天体であり,その形成プロセスの全容解明は惑星形成論を構築する上で避けられない重要天体である.本計画では天体が原始惑星系円盤由来の大気を持っていた場合について,天体衝突による大気量や大気組成の変化を調べることで,過去の形成過程における衝突の影響が現在の惑星大気にどのような影響を及ぼすかを明らかにした. 本計画では水素大気と岩石蒸気が混合した場合を仮定し,混合大気の主要組成を調べ,その惑星が長期間大気を安定して保持できるか調べるために,光蒸発を考慮した長期進化計算を行った.その結果,水素・ヘリウムのみが流出し,水大気のみ取り残されるような大気量と軌道長半径の組み合わせが存在することがわかった.本計画によって行った研究成果は系外惑星の大気組成にとって重要な指標となる水大気の存在を示唆する結果となり,この結果は日本地球惑星科学連合,日本惑星科学会,日本天文学会,新学術領域「星・惑星形成」2022年度大研究会で講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画ではまずSmoothed Particle Hydrodynamics法を用いた数値流体計算を行って衝突における大気流出量と大気への岩石蒸気の混合量を制約する計算を行った.特に,地球質量かつ10%以下の大気量の天体に注目し,それらの天体の衝突直後の惑星環境を決定した.計画の初年度はこのような惑星初期条件の決定を行い,その後惑星進化モデルの構築を行った.計算を行ったところ,惑星の組成が水素・ヘリウム・水の三成分系となることから,複数成分の惑星大気散逸をモデル化する計画を追加した.大気散逸モデルの改良を行うことで長期進化の結果として大気組成が変化する可能性について議論することが可能になった.これらの結果をまとめて学会で講演し,国際誌への投稿準備を行っている.惑星大気モデルの改良は予想外の追加内容だったが,研究成果をまとめて論文投稿準備まで計画を進めることができたことから,おおむね順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
惑星大気モデルの改良と惑星進化計算を行うにあたり,初期の惑星大気量の影響が最も大きいことが示唆された.これにより,惑星の初期大気量が1%程度と少ない場合における惑星の大気進化や天体衝突における大気量の変化を理解する必要があることがわかった.しかし,大気量が少ない天体の衝突における大気量の変化を調べるためには数値流体シミュレーションの計算解像度を高くする必要があったことがわかり,高解像度の天体衝突計算の再計算が必要となった.この高解像度の計算により,衝突後の大気量と蒸発岩石大気の混合量を制約することができれば,様々な大気量を持つ惑星について衝突による大気進化の影響を議論することが可能となる.今後の研究方針として,高解像度の天体衝突計算を行い,衝突後の大気量を推定する予定である.
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