研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
21H00041
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細川 隆史 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30413967)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 星団形成 / 星形成 / 電離領域 / 磁気流体力学 / 適合格子計算 / 銀河形成 / 数値シミュレーション / 輻射流体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
銀河系近傍における多様な環境で起こる星団形成を対象とし、特に形成後期の母体となるガス雲が破壊されて星団が雲外へ露出していく過程を研究する。このとき磁気的効果と星団中に含まれる大質量星からの輻射フィードバック効果の相互作用に着目し、形成される星団の性質、すなわち進化を通じての星形成効率、星団内の星質量分布、重力的な束縛度がどのような効果によって主に制御されているかを明らかにする。誕生する星団側だけでなく、破壊されていくガス雲の化学構造(特にCO、H2分子の存在量)の進化も首尾一貫して調べ、各進化段階にあるガス雲が金属量の大小、磁場強度等に応じてどのように観測されるかを整理する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は星団形成における磁気的効果、星団中の大質量星が放つ輻射によるフィードバック効果、およびそれらの相互作用効果について主として数値シミュレーションを用いて明らかにすることである。これまでの研究で、この目的に向けて研究計画に沿った以下の一連の研究を行った。 まず、星団形成の主な駆動プロセスの一つと考えられる分子雲衝突を想定し、その場合の磁気的効果について一連の3次元磁気流体シミュレーションを実行して調査した(Sakre et al., 2023, in press)。これまでの研究では磁場は星団の前駆体となる大質量クランプ形成を促進する、星団形成にとってpositiveな効果が指摘されていた。一方、この研究では雲衝突後期、つまり衝撃波圧縮を受けたガス層が周囲の希薄背景ガス中に露出した段階になると磁気圧駆動の急速な膨張が起こり、これは星団形成にはnegativeな効果があることを見出した。雲衝突の持続時間がpositive/negativeの二つの効果の勝敗を決定し、適切な条件下でのみ、磁場は星団形成を促進することができる。これらの傾向は、観測結果が示唆するものとも一致することが分かった。 また、一部の近傍系外銀河には球状星団の前駆体に相当するともいわれる、若い大質量星団(Young Massive Cluster; YMC)が見られるが、このYMC形成段階の観測的特徴についても研究を進めた。研究協力者の福島肇氏と矢島秀伸氏(筑波大学)の研究によると、YMC形成時は星団重力が高温電離ガスをも重力的に束縛する段階が現れる。この場合、電離領域の動的膨張は大きく遅れて星団近傍に高密度の比較的大きな電離領域が出現する。特に電波連続光スペクトルにこの段階の特徴がよく現れ、かつこの特徴はこれまでの観測に見れる傾向とよく一致することが分かった。この成果はすでに学会や研究会で発表し、現在論文化を進めている段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
星団形成時の磁気的効果に関する論文は年度内に査読論文として掲載決定の段階まで達することができた。この計算に星団に含まれる大質量星からの輻射フィードバック効果を含める計画で年度途中まで計画を進めていたが、雇用していたPD研究員が10月に予期せず民間企業に就職して離脱してしまったため、この方向のまま進むことは難しくなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでの研究を踏まえつつ、さらにこれを広げる形で多様な研究を展開していきたいと考えている。昨年度に離脱してしまったPD研究員に替えて、繰越の残るR5年度に新しく研究員を幸いにして雇用することができた。残る計画研究の1年間を有効に用いて研究を進めたいと考えている。 YMC形成時の観測的特徴に関する研究は、最初の論文が形になりつつあるが、さらに拡張した研究を準備している。最近のJWSTやALMAの観測では超遠方銀河中での高密度電離領域の存在が指摘されており、これはこうしたスターバースト銀河中で起こる高密度星団形成を見ている可能性がある。このとき見ている光は赤方偏位したIRあるいは電波の輝線放射であるため、これまでの連続光スペクトルに関する研究を拡張し、輝線放射についても研究を進める必要がある。既に予備的な結果はいくつか得られており、計算を進めて結果の取りまとめまで達したいと考えている。
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