配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
|
研究開始時の研究の概要 |
サイズにして8 桁にわたり収縮し“質量を集め, 持ち込んでしまった角運動量と磁束を外に捨てる”と, ガス雲から星が生まれる. 本研究では, 東アジア天文台に国際協力で立ち上げ, 高い偏波撮像能力が実証された, 450/850μm 偏波計POL-2 による, 12 のフィラメント状分子雲内部の磁場の向きを解析する. これにより, 1.フィラメント内磁場と乱流の関係から分裂機構へ制限をつけ, 磁場形状から物質集積史を辿る. 2. フィラメント内降着流と磁場の関係から, 分子雲コア形成研究における磁場の知見を大幅に増強する. 3. 磁場に関する, 分子雲コア崩壊の初期条件の提示を目指す.
|
研究実績の概要 |
今年度の大きなタスクは, 東アジア天文台EAOのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡JCMTに搭載したサブミリ波偏波計POL-2による, オリオン座分子雲A積分記号形フィラメント全域にわたる波長450/850μm偏波撮像の完了であった. 当該天体は, 太陽系からもっとも近い大質量星形成領域であり, 全体構造をとらえたサブミリ波での放射偏波マッピングは, これが初めてである. 取得された時系列生データは, 国立天文台・天文データセンターの共同利用計算機群で, 報告者らが整備した, 解析パイプラインを用い像合成処理を行った.
簡易解析の結果, 波長850 μmでは熱輻射をしている冷たい(温度15 K前後)物質からの放射を主に捉えており, 450 μmよりも広がった放射を捉えている. また, 分子輝線データから予想される分布を概ね再現している. この観測結果を解釈するうえで, 前提となるのが, どの機構が星間ダストの整列機構としてもっとも効いているのかの判定である. このため, 上述の解析では, 波長450/850μmデータの強度比および偏波強度比やそのスペクトル指数とダスト整列モデルとの照合を優先させている. これについては, ベトナムの共同研究者の協力を得て, 2023年1月に現地にて集中的に行った. この結果, オリオン・ブライトバーなどの一部の領域を除けば, 輻射トルクでダスト整列に至ったとするモデルと整合することがわかった. さらに求められた偏波率スペクトル指数から, 観測されたダストは珪素と炭素の混合物であるとすれば, すべての観測結果を整合的に説明できることがわかった. この結果を受け, 2023年5月現在, フィラメントや分子雲コアなどの構造の同定および先行研究との比較に取り組んでいる.
|