公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ハイエントロピー合金の基本概念は、新しいメタラジーとして、材料科学の他に触媒化学などの分野にも取り入れられつつあります。その要点は、構成元素の多種化により生じる高い配置のエントロピー効果による相の安定化を上手に利用し、新しい材料特性を創発しようというものであります。中でも申請者は、ハイエントロピー効果により安定化された不規則構造の中に生じる「原子分布の偏り」の影響に興味を持っております。本研究計画では、中性子・放射光実験により原子分布の偏りの有無を明らかにし、サブナノメートルスケールの原子分布の偏りと材料特性の相関の検証をいたします。
中エントロピー合金TrCoNi(Tr=Cr, Mn)において,具体的にどのような安定相・準安定相が存在するのかや,短距離秩序から長距離秩序への発展の詳細はわかっていなかった。昨年度までの研究により当該合金中において発見された散漫散乱を足掛かりに,短距離規則化とその熱処理効果が調べられた。中性子実験の結果,CrCoNi試料では短距離規則化の兆候は依然見られず,一方のMnCoNi試料においては明らかな散漫散乱の発達が観測された。長時間焼鈍試料においては,わずかながらブラッグ反射の分裂が観測され,立方晶からの対称性の低下が明らかとなった。400℃の長時間焼鈍の場合,相関長は時定数40時間程度の指数関数に従って,4nm程度まで発達することが明らかとなった。観測された対称性の低下はL10型の規則化によるもので,恐らくNiMn原子対の偏りが駆動力となっていることが推察された。また両合金の規則化傾向の違いは,低温の原子拡散率や,規則化温度の違いとして解釈できることを指摘した。同様なミディアムエントロピー合金に対して,X線吸収端微細構造(EXAFS)解析が行われ,構成元素周りの局所構造が調べられた。実験結果を詳細に分析した結果,EXAFSスペクトルは不規則構造モデルによって概ね再現されることがわかった。回折実験から評価された平均構造からのずれを平均二乗相対変位の値から評価した。MnCoNiにおいて観測された比較的大きな平均二乗相対変位は,回折実験によって観測されたL10型の規則化に起因すると解釈された。またCrCoNi合金の平均二乗相対変位は,過去に示された第一原理計算結果と比較して小さいことが明らかとなり,その解釈として,結合状態の変化(共有結合性)に起因する可能性を示した。これらの結果は論文に纏められ,一方は査読中,他方は近日中に投稿予定となっている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 91 号: 10 ページ: 103601-103601
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Journal of Physics: Materials
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巻: -
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40022710311
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10.7566/jpsj.90.114702
210000159393