研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
21H00147
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
花咲 徳亮 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70292761)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 構造物性 / 放射光X線 / EXAFS / 放射光X線 |
研究開始時の研究の概要 |
ハイエントロピー合金は、優れた強度・延性などから大きな期待が寄せられ、研究は盛り上がりを見せている。特性を向上させる上で微視的に構造を明らかにする事は重要である。放射光X線は、調べたい元素の吸収端にX線のエネルギーを調整すれば、その元素に着目して格子構造を調べられる所に特徴がある。そこで本研究では、EXAFS(広域X線吸収微細構造)などの測定により、本合金の局所的な格子構造や構成元素の特徴を明らかにし、優れた特性のメカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
多種類の元素が等しい比率で含まれるハイエントロピー/ミディアムエントロピー合金は、優れた力学特性から近年注目を集めている。元素間相互作用によって局所的に構造が歪んでおり、物性に大きな影響を与えると考えられている。そのメカニズムを明らかにするため、高エネルギー加速器研究機構にて広域X線吸収微細構造(EXAFS)を測定し、局所構造を調べてきた。昨年度までの研究で、代表的なミディアムエントロピー合金であるCrCoNiにおいてCrのデバイ・ワラー因子(局所構造の乱れ)がCoやNiに比べて大きい事が分かっていた。この傾向がCrCoNi以外の他のHEA/MEA合金でも共通したものなのか明らかにするため、今年度は、3d遷移金属元素から構成されるfcc格子系合金(CrFeCoNi, CrFeNi, MnCoNi, FeCoNi等)についてもEXAFSの測定を行ってきた。その結果、Crのデバイ・ワラー因子が他の元素に比べて大きい事が、他の合金にも共通した性質である事が分かってきた。一方、Ni周りについては、局所的な構造乱れが共通して小さかった。第一原理計算によって、原子番号が小さい3d遷移金属元素ほど原子変位が大きい事が示唆されていたが、その元素に特有な原子変位によって、その元素の周りで局所構造が乱れていると考えれば、本研究で得られた実験結果は第一原理計算を支持するものである。原子変位が大きいほど降伏応力が大きい事が示されているが、本研究によって、Cr元素の添加によって力学特性が向上する機構を実験的に明らかにする事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
合金にCr元素を加えると、力学特性が向上する事が以前より経験的に知られていた。本研究により、その微視的メカニズムに実験的に迫る事ができた。得られた知見は、合金の力学特性を向上させる物質設計を考える上で有益であると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
第一原理計算によると、原子番号が小さい3d遷移金属元素ほど原子変位が大きい事と示唆されている。この全体的傾向について精度を上げて実験的検証を進めるためには、Crより一つ原子番号が大きいMnを含む合金についても、詳細に調べる必要がある。Mnを含む合金については、測定した試料の種類がまだ十分ではなく今後さらに実験を進めていきたい。
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