研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
21H00154
|
研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
|
研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
椎原 良典 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90466855)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | ハイエントロピー合金 / 第一原理計算 / 原子応力 / 溶質原子 / 電荷移動 / 体積変化 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy, HEA)の機械的特性を更に向上させるアイデアとして,少量の溶質原子の添加による構造のヘテロ化が注目されている.溶質原子が誘起する内部応力場がそれらの機構と目されているが,4種から5種以上の母相原子が含まれるHEAでの応力場の推定は容易でない.本研究では第一原理原子応力計算法を用いて,電子論から直接的に,溶質原子が誘起するHEA内部応力場を明らかとすることを目的とする.誘起応力場の発生メカニズムを明らかとすることで,溶質原子による固溶強化・相変態の機構解明,ひいては,溶質元素添加によるHEA合金特性の設計指針の確立に貢献する.
|
研究実績の概要 |
これまでに,fcc型ランダム合金(CrMnFeCoNiのサブセット)では先行研究と同様に電荷移動,bcc型ランダム合金(VNbMoTaWのサブセット)ではバルクからの体積変化がその支配的要因であることを確認している.しかし,fcc型であっても体積変化が,また,bcc型では電荷移動が原子圧力を左右することはあり得る.今年度研究では原子圧力の支配要因を更に調査するため,データ解析手法であるランダムフォレストを適用した.また,CrMnFeCoNi合金にアルミニウム原子を添加した計算を実施した.その結果をデータ解析により得られた知見から解釈した. fcc系合金,bcc系合金における原子圧力をランダムフォレストにより回帰した.原子電荷と原子体積はそれぞれMulliken電荷解析とVoronoi解析により評価した.その結果,fcc合金・bcc合金の両者について良好な精度で原子応力を回帰することができた.さらに,その結果から特徴量の重要度を評価したところ,fcc合金の原子応力は電荷移動,bcc合金でのそれは体積変化が支配的な決定因子であることが明らかになった.ただし,bcc合金でのバナジウムのケースのように,原子圧力場には電荷と体積の両者が同時に影響するケースも確認された. CrMnFeCoNi合金にアルミニウム原子を添加した系の原子圧力を評価したところ,Alで大きな原子応力が見られた.CrMnFeCoNi合金の構成元素はバルクにおける原子体積がほぼ同じである一方で,電気陰性度が異なる.このことが,電荷移動が原子圧力場の支配因子となっている理由である.一方で,アルミニウムはこれらの元素に比して原子体積が大きい.合金内部でアルミニウムは大きく圧縮されていることから,この場合は体積が支配因子であると言える.この結果は,アルミニウムの含有による降伏応力の上昇を観測した実験結果に合致している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子圧力場をデータ解析により回帰し,そこでの議論を添加元素が誘起する応力場の議論に援用した.ここで得られた知見に立脚して,添加元素を含む他の合金系の計算を進めていく.
|
今後の研究の推進方策 |
短距離秩序が誘起する原子応力場について検討する.共同研究者からCrMnFeCoNi合金におけるランダム構造,短距離秩序構造を得ているため,そこでの原子応力の分散を評価し,溶質原子無しのケースでの短距離秩序構造による原子応力の変化を明らかにする.また,Siを含むCrMnFeCoNi合金における原子応力を評価し,溶質原子による応力状態の変化を解明する.
|