公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
新型コロナウイルスにより私たちの日常生活が制限される強いストレスの中、様々な国において家庭内暴力や虐待の増加が問題視されている。また、臨床場面においても、様々な精神疾患の症状の1つに攻撃性があり、その生物学的基盤を理解することが早急に求められている。本研究は、攻撃性の個体差を生み出すメカニズムとして、脳内免疫細胞であるミクログリアの役割をマルチスケールな観点から明らかにすることを目的とする。
近年、精神疾患と免疫系の関係が徐々に明らかになってきており、様々な精神疾患において免疫系の異常が報告されている。攻撃性についても免疫系の関与が相関的に示されているが、そのメカニズムはほとんど分かっていない。本研究は、攻撃性の個体差を生み出すメカニズムとして、脳内免疫細胞であるミクログリアの役割をマルチスケールな観点から明らかにすることを目的とする。申請者らのこれまでの研究から、攻撃性の異なる個体間での比較を行ったところ、背側縫線核(DRN)における内在性のインターロイキン1β(IL-1β)量に違いがあり、攻撃性が低い個体のほうが高い個体よりもIL-1β量が高いことが明らかとなった。薬理学的手法や遺伝学的手法を用いて、内在性のIL-1βがDRNにおいて作用できないようにすると、いずれの操作においても攻撃性が増加することが明らかとなった。このことから、DRNにおける内在性のIL-1βは攻撃行動を低下させることが示された。IL-1βの個体差がどの細胞から生み出されているかを解析したところ、攻撃性が低い個体のほうがDRNにおけるミクログリアのIL-1β発現量が高いことが明らかとなった。このことから、DRNのミクログリアが攻撃行動の個体差を生み出している可能性が考えられた。DRNのミクログリアが攻撃行動にどのような影響を与えるかを検討するために、ミクログリア特異的にCreを発現するマウス系統を共同研究により導入して、DRNのミクログリア特異的な操作を行い、解析を進めている。また、ミクログリアの存在が攻撃行動に与える影響を明らかにするために、薬理学的にミクログリアを欠損させる実験を行った結果、攻撃行動に影響があることが明らかとなった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuroscience Research
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