研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
21H00278
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
複合領域
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 剛介 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40648268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | タンパク質化学合成 / 進化分子工学 / 人工抗体 / モノボディ / ユビキチン化タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、タンパク質化学合成の方法を用いてユビキチン化タンパク質を作製するが、その標的として、A)翻訳の品質管理機構に関わるリボソームタンパク質、B)維持メチル化機構に関わるPAF15、C)ヘテロクロマチン形成に関わるHP1αおよびヒストンH2A、などを選択する。化学合成で作製されたユビキチン化タンパク質やその他のユビキチン関連タンパク質(例えばプロテアソームのサブユニットであるRPN10など)に結合する人工抗体は、申請者の研究グループで開発されたin vitroセレクション法である「TRAPディスプレイ法」を用いて取得する。
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研究実績の概要 |
2021年度は、(1)ユビキチン化タンパク質の化学合成、および(2)ユビキチン関連因子に結合する人工抗体モノボディの取得、という2種類の研究テーマに取り組んだ。 (1)について:2021年度は2種類のユビキチン化タンパク質の合成に成功した。1つ目として、2020年度から合成に取り組んできた「維持メチル化」機構に深く関わるジユビキチン化PAF15タンパク質の化学合成を引き続き行った。前年度の結果では、合成効率が低く、また、HPLC精製によって除くことのできない不純物が一定量混入していたため、合成ルートを改善する必要があった。N末端側からC末端側へ順番にペプチドを連結する「直線的合成ルート」から「収束的合成ルート」に変更し、またワンポットペプチド連結反応やセレノシステインを駆使することで、最終収率を60倍以上上昇させることに成功した。2つ目は、ユビキチン化されたシロイヌナズナ由来ヒストンH2A.Zの合成を行った。本合成の際に、チアゾリジンを新規アルデヒドスカベンジャー分子によって連続的にワンポットで脱保護可能な新たな手法を開発し、その新手法を用いて高い収率での合成に成功した。 (2)について:標的分子に結合する人工抗体を取得する進化分子光学的手法であるTRAPディスプレイ法を用いて2種類のユビキチン関連タンパク質に結合するモノボディの取得を試みた。まず1種類目として、プロテアソームに結合するUBLドメイン3種類(RAD23B、UBQLN2、USP14)を標的としてTRAPディスプレイを行って結果、それぞれのUBLにnM前後のKdで結合するモノボディクローンを複数取得することに成功した。 2つ目の標的として、オートファジーの重要な因子であるオプティニューリンOPTNに結合するモノボディクローンの取得を行ったところ、OPTNに数nMで結合する複数のモノボディクローンが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要欄に記載したテーマ(1)については、化学合成が困難だと言われている200アミノ酸以上からなる高分子量タンパク質であるジユビキチン化PAF15をmgスケールで合成する合成ルートを確立し、実際に生化学解析まで持ち込むことができた。また、ユビキチン化ヒストンの合成では、これまでワンポットペプチド連結反応に応用することが困難とされていたチアゾリジン保護基をワンポット連結法に応用するための方法を打ち出し、実証することができた。 テーマ(2)については、1年間でUBLタンパク質3種類およびオプティニューリンOPTNタンパク質へnM程度の結合定数を有するモノボディクローンを複数取得することができた。また、概要欄には記載していないが、本ケモユビキチン領域の前期(2019-2020年度)の続きとして、ユビキチン結合モノボディの応用実験(プルダウン実験や免疫染色実験)やモノボディの細胞応用実験での成果も共同研究で得られており、またユビキチン化リボソームタンパク質へのTRAPディスプレイ実験等も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、概要欄記載の(1)テーマに関しては、2021年度に開発したワンポットペプチド連結法を拡張子、N末端とC末端両方向へペプチドをワンポットで連結可能な方法論を確立し、最終的には、ユビキチン2分子が修飾されたヒストンH3(ジユビキチン化H3)の化学合成を行う予定である。ジユビキチン化H3は、2021年度合成したジユビキチン化PAF15と同様に、維持メチル化機構に深く関わる分子として知られているため、合成したタンパク質を共同研究で構造解析や生化学解析を行うことで、維持メチル化機構に対する新たな知見を得たい。また、ジユビキチン化PAF15タンパク質についても、合成ルートの確立ができたため、その合成ルートを用いてスケールアップを行う予定である。 (2)のモノボディ取得テーマに関しては、ユビキチン化リボソームタンパク質へ選択的に結合するモノボディの取得実験および解析実験を進めると同時に、新たな標的としてユビキチン分岐鎖に結合するモノボディの取得実験を進める予定である。
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