研究領域 | 生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新 |
研究課題/領域番号 |
21H05321
|
研究種目 |
学術変革領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
原田 悦子 筑波大学, 人間系, 教授 (90217498)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
|
キーワード | 認知的加齢 / 会話機能 / 会話負荷 / レジリエンス特性 / 認知の感情・動機づけ基盤 / 会話 / レジリエント特性 / 異世代間対話 / 高次認知機能 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで老齢学では,言語機能は健康な加齢による機能低下が少ない領域とされてきた.しかし実生活では高齢者との対話は若年成人同士の対話と比べ「手間と時間がかかる」とされがちであり,また意思疎通の困難さはしばしば個々の高齢者の人格特性や疾病へ原因帰属されている.本研究は,実際の生活空間での健康な高齢者の会話機能が加齢によりどのような変化を示すのか,高次認知機能としての会話を対象とし,特に若年成人との相互作用に対する会話分析から,加齢に伴う「基本的認知・知覚・運動機能低下」「感情・動機づけ側面の変化」「聴き手側との関係性の変化」という3層に対する柔軟な対応(レジリエント特性)とする視点から検討する.
|
研究実績の概要 |
高齢者の認知機能における加齢変化を中心として,そこから発生する会話の現象的変化を,「(高齢者自身が)影響を受ける諸要因の変動を受け止めつつ,会話を維持し続けるレジリエント特性により,会話を変化させていく」という特性から明らかにしようとして,実際に生じる高齢者-若年成人(大学生)会話)の話者交替(turn-taking)に注目をして分析を行った.量的な比較検討を可能とするため,ペアで行う実験室課題を実施中の会話を対象に,高齢者,若年成人(大学生)の同世代,異世代間ペアの会話を対象とした.その結果,会話で発話重複が生じた後,a)若年成人では一般に無標の他者回復が優勢であり,ターンは交互に取られ,相手のターンが終了した時に自らに割り当てられるというルールに沿って対話を構築していると考えられたのに対し,b)高齢者では有標の自己回復が多く発生し「話し始めた人がターンを取る」ルールが優勢と考えられた,またc)高齢者の「有標自己回復」の傾向は,高齢者同士に比べ,特に若年成人との異世代間会話に強くみられた. 加えて,分析により特徴的であることが見えてきたため,文頭に「で」をつける「話者性の主張」についてカウントを行ったところ,特に若年成人において,高齢者との異世代間会話において高頻度で生じていることが示された, いずれの結果も,若年成人において高齢者との異世代会話において「ターンの取りにくさ」が生じていることを示唆するものと考えられた.この結果を受けて,異世代間会話における若年成人の会話機能変化についての分析を加えることとした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者の会話機能変化を中心に分析することを当初目的としてきたが,実会話分析の結果として,大きな変化がみられるのは「高齢者と会話をするときの若年成人(大学生)」であることが明らかになってきた.現状の研究成果は,若年成人における対話相手に伴う会話変化の分析が中心となっている.
|
今後の研究の推進方策 |
高齢者の会話のみを対象としたレジリエンス特性分析は,質的分析,ならびに実験課題による量的分析のいずれにおいても,統制が難しく,結果の明晰性が上がりにくいこと,興味深い現象は,高齢者との対話における若年成人の会話機能変化と考え,まずは若年成人を対象とした検討からとりかかり,実験室課題を工夫することによる認知負荷計測について進めていく.
|