研究領域 | 生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新 |
研究課題/領域番号 |
21H05325
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅰ)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小笠原 知子 金沢大学, GS教育系, 助教 (20772586)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | あいまいな喪失 / 認知症 / 家族介護 / 認知症患者家族 / 家族支援 / 介護負担感 / メンタルへルス / 介護 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢化する現代社会において、身体や認知機能のみならず、親密な関係性の喪失は、当人および近親者の心の健康やQOLに大きな影響を及ぼす。中でも、「あいまいな喪失(Ambiguous loss)」(Boss, 1999)は「公に認知されることのない喪失」という特徴から、自然な「悲嘆」のプロセスが遮断され、精神疾患の引き金ともなることが明らかになっている。本研究では、認知症患者をもつ家族への質問票調査により「あいまいな喪失」の実態を把握し、介護家族の心理社会的健康度を分析する。また、インタビュー調査を通して「あいまいな喪失」への対処法を明らかにし、不確実な状況へ対処するための援助資源を探索する。
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研究実績の概要 |
この調査研究は、認知症患者を家族にもつ介護人が体験する「あいまいな喪失(Ambiguous Loss; 以下、AL)」について明らかにすることを目的としており、特にALが及ぼす家族介護人のメンタルへルスや悲嘆反応への影響、患者のBPSDや介護負担感との関わりを検証する。本年度は次のような調査を段階的に実施し、終了している。 ①インタビュー調査と文献精査による「AL尺度」の作成:認知症患者を家族にもつ介護人8人に半構造的インタビューを行い、その結果と関連文献の精査により46項目からなる「AL尺度」を作成した。その際、ALを体験しながらも健康度が維持されている場合の防御因子について仮説を立て、「レジリエンス項目」として項目化した。 ② 認知症介護家族の「AL体験」および「心理社会的健康度」の検証:認知症患者を家族に持ち、「主として介護に携わっている」または「主ではないが介護に携わっている」認知症介護家族を対象としてインターネット調査による質問票調査を実施。2400人の回答を得る。この質問票は、①AL尺度(46項目)に加えコロナ禍での介護状況に関する質問3問の計49項目、②Zarit介護負担尺度日本語版尺度22項目、③認知症介護家族に対する悲嘆尺度MM-CGI-SF-J日本語短縮版 18項目、③ケスラー6メンタルヘルススクリーニング6項目、⑤「ALへの対処」記述式質問3項目、の合計98項目からなる質問で構成されている。 現在、回答データの分析が進行中であるが、AL尺度による回答結果の記述統計から、全体のおよそ10パーセントに当たる層が「あいまいな喪失」として定義される状況を経験していると推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した調査はすべて終了しており、結果の分析とその発表を次年度に実施予定。
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今後の研究の推進方策 |
結果の分析に関しては、次の点を中心として実施予定である: ①インタビュー調査の質的分析により、進行する認知症に伴う家族の「進行する喪失感と 悲嘆」について探索し、理解を深める。 ②インタビュー調査と文献精査により新たに構築した「AL尺度」の信頼性と妥当性を検証する。 ③認知症患者家族の介護人の体験する「あいまいな喪失」の浸透度と重篤性をAL尺度値の分析により明らかにし、得られた記述的回答の質的分析から、上記の分析を多角的に補強、検証する。 ④既存の尺度を用いて回答を得た家族介護人のメンタルへルス、介護負担感、悲嘆反応とAL体験との関連性を検証する。 ⑤質的、量的分析を通して、ALを体験しながらも「健やかさ」を維持するグループに特徴的な「防御因子」について考察を行う。
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