公募研究
学術変革領域研究(A)
本研究は「三重項から一重項励起状態への逆項間交差をナノ秒オーダーで引き起こす遅延蛍光材料の創出」を目的とする。そのために、①スピン-軌道相互作用に代表される動的エキシトン効果を考慮した量子化学計算と②機械学習による速い逆項間交差を示す候補分子の仮想スクリーニングを効率的に行う。さらに、③候補分子の合成から光物性およびデバイス特性評価までの一貫した実験研究を推進する。このような、理論設計と実証実験を両輪とした本研究により、ナノ秒オーダーの逆項間交差を示す遅延蛍光材料を見出すことで、貴金属を含む従来のリン光デバイスを凌ぐ高輝度かつ高効率な有機ELデバイスを実現する。
次世代の有機EL材料として注目さている熱活性化遅延蛍光(TADF)材料は、通常発光しない励起三重項状態から発光可能な励起一重項状態への遷移である逆項間交差(RISC)により、有機ELの内部量子効率を100%まで高めることが可能である。しかし、吸熱的な遷移であるRISCがTADFを律速し、その寿命は通常の蛍光と比べて非常に長いマイクロ秒に留まっている。本研究では、スピン-軌道相互作用に代表される動的エキシトン効果を考慮した量子化学計算とベイズ最適化により、高いRISC速度定数(kRISC)を示す有機分子の仮想スクリーニングを行った。その結果、理論上10^7 s^-1以上の高いkRISCを示す分子を58種類見出した。また、機械学習後の非線形回帰モデルを用いて、kRISCの極大値周辺における分子フィンガープリントの重要度を定量した。さらに、仮想スクリーニングで見出した分子を合成し、光物性を評価したところ、804 nsの短い遅延蛍光寿命と8.3 × 10^7 s^-1の高いkRISCを示すことを明らかにした。この高いkRISCに由来して、本材料を用いた有機ELデバイスは、5000 cd m^-2の高輝度時においても22.8%の高い外部量子効率を示した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.n-aizawa.com
https://scholar.google.co.jp/citations?user=agrDe20AAAAJ