研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05431
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 徹 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80750455)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | リュウグウ / 宇宙風化 / 有機物 / 小惑星 |
研究開始時の研究の概要 |
探査機はやぶさ2が回収したC型小惑星リュウグウの試料は、我々が初めて手にする有機物や水に富む天体の表面物質であり、「宇宙風化」と呼ばれる天体の表面で進む物質の変化は太陽系天体の形成や宇宙における固体の進化を探る鍵となる。本研究では、リュウグウ試料の微細な表面組織の特徴を明らかにし、粒子線照射実験との比較も行って、リュウグウ表面で起こる無機鉱物・有機物の生成と変化の全体像を解明する。
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研究実績の概要 |
本課題は小惑星リュウグウの表面で独自に起きる化学進化の解明を目指している。今年度は、炭素質の小惑リュウグウから持ち帰った試料の初期分析が始まり、 リュウグウ試料の初期分析に参画する形で、小惑星リュウグウ表面で進行する化学進化を理解することを試みた。具体的な研究方法として、京都大学で主に実施された初期分析に参加 し、小惑星リュウグウの宇宙風化に関係する組織の同定を試みた。分析手法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を主に用いた。最初に、粒子の表面の微細な構造や化学組成及び 鉱物種を分析することで、太陽風の打ち込みや微小隕石衝突によって変成した微細組織の探索を行なった。一方、リュウグウの初期分析チームは多くの海外研究機関が参加しているため、 リュウグウ粒子の試料配布容器からの取り出しや固定、初期的な試料の記載を行なったのち、海外研究機関へ試料を送付することで研究協力の推進に貢献した。リュウ グウ試料の主成分は、層状ケイ酸塩と呼ばれる含水鉱物がほとんどの体積を占めている。こうした鉱物が宇宙風化を受けた結果翔j流産物はこれまでに誰も見たことがなかったため、宇宙風化組織の同定は困難であったが、結晶構造の微細な変化など証拠を電子顕微鏡観察によって見つけることで、リュウグウの試料に刻まれた宇宙風化の痕跡が残されているこ とを示すデータを得た。加えて、小惑星における水質変成の産物として知られている硫化鉄や磁鉄鉱、炭酸塩鉱物の表面でも宇宙風化の組織を記載した。これらの結果から、 リュウグウの表面の宇宙環境の中で変化した鉱物の特徴をおおまかにと らえることを達成した。こうした初期的な研究成果の詳細は、秋・春に開催された国際 学会(日本、 アメリカ)にて発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では水や有機物に富む小惑星リュウグウの表面で起きる化学進化の解明を目指している。本年度は、小惑星リュウグウの試料を直接分析する機会を得たこと で、リュウグウの試料の観察から炭素質小惑星の宇宙風化の証拠を得た。リュウグウ試料の分析によって、当初から予想していた鉄金属を宇宙風化産物として見つけることができた。本課題において、小惑星表面で生成した金属鉄は有機物合成の触媒になる可能性があると提案しており、有機物の変化に着目した化学進化を理解する上で研究を進展させることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はリュウグウ試料に刻まれた天然の宇宙風化の組織に注目して記載学的な研究を行った。その結果、リュウグウの表面で実際にどのような鉱物の変化が進行したのかに ついて、TEM観察からナノスケールでの変化をとらえることができた。一方で宇宙風化の素過程を明らかにする上では、宇宙環境を模擬した実験も重要であり、今後は国際公募分析によってリュウグウ試料の特徴をより深く理解することを目指し、一方で実験的な手法からも宇宙風化による化学進化の解明を目指したい。
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