公募研究
学術変革領域研究(A)
XENON1T実験の低エネルギー電子反跳事象の探索では、約3.3σの統計的有意性で予想を超える超過が見つかり、電子と弱く結合する低質量の暗黒物質や太陽アクシオンなど様々な可能性が検討されている。本研究では大型化(1Tの3倍)かつ、低BG化(1Tの1/6)したXENONnT検出器を用いて、低エネルギー電子反跳事象の探索を史上最高感度で行い、1T実験で発見された電子事象超過の検証とその背後に潜む物理の解明を行う。
本研究の目的は、宇宙に存在する未知の物質、暗黒物質を発見しその正体を解明することにある。申請者が参加したXENON1T(1T)実験では、低エネルギー電子反跳事象の探索を行ったところ、約3.3σの統計的有意性で予想を超える超過が見つかり、電子と弱く結合する低質量の暗黒物質や太陽アクシオンなど様々な可能性が検討されている。しかし1T実験では、トリチウム(水素の放射性同位体でキセノン検出器中には水や水素の形態で存在する可能性がある)など予期せぬ背景事象(BG)の混入の可能性も排除できず、素粒子標準理論を超えた新たな物理の発見のためには、より信頼度の高い観測が不可欠な状況となっている。XENONnT(nT)実験は2021年7月に本格的なデータ取得を開始し、2021年11月まで初期観測を行なった。検出器の建設に当たってはゲルマニウム(Ge)半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロスコピーやICP-MS質量分析による用いる検出器部材の最適化・選定、さらには蒸留塔を用いたキセノンの純化など、最先端の物理・化学的手法を用いることで、選択的な放射性ラドンの排除を確立した。また、新たな液体キセノン純化法を導入することで、過去実験に比べnT実験は10倍以上のキセノン純度(0.01 ppb)を達成することに成功し、水や水素といった形態で存在する恐れのあるトリチウムを効率的に排除することに成功した。この結果、過去の実験と比べて背景ノイズを1/5に削減することに成功し、レートにして16事象/(トン・年・keV)と世界最高の極低放射能環境を実現した。また約3ヶ月間の観測データは背景事象からの予測と無矛盾であり1T実験で確認されたアクシオンと思われる信号は見つからなかった。これにより、特に電子と弱く結合する暗黒物質に対し世界で最も厳しい制限を与えることに成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (12件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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