研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
21H05456
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮武 広直 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (20784937)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 観測的宇宙論 / 暗黒物質 / 銀河団 / 多波長観測 / 弱重力レンズ効果 |
研究開始時の研究の概要 |
(質量以外の)銀河団内部の性質と周辺環境との相関(アセンブリ・バイアス)は現在の標準宇宙論であるΛCDM模型で予言されているが、未だ検出されていない。本研究では、可視光及び近赤外、X線、マイクロ波といった多波長データを組み合わせ、さらにすばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)サーベイのデータを用いて銀河団の弱重力レンズ効果を測定することで、高確度でアセンブリ・バイアスを検出することを目指す。また、銀河団の物理的半径であるスプラッシュバック半径とアセンブリ・バイアスの関係を調べるとともに、スプラッシュバック半径の大きさから暗黒物質の性質に制限を付けることを目指す。
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研究実績の概要 |
アセンブリ・バイアスは銀河団内部の質量以外の性質と銀河団の周辺環境の相関のことである。15年程度前にN体シミュレーションを用いた理論的研究で銀河団の形成時刻と周辺環境の相関などが存在することが指摘されてきたが、観測的な検出が試みられ始めたのはここ5年程度である。 本年度は以下に述べるアセンプリ・バイアスの観測的研究を進めた。まず、SDSSで検出されたz<0.12の約600個の銀河団を、実際に観測された宇宙の大規模構造を再現するN体シミュレーション(Elucidシミュレーション; Wang H. et al., 2014, ApJ, 794, 94)で記録されている銀河団の形成時刻で銀河団サンプルを分けた。それぞれのサンプルで銀河団と銀河の相互相関を取ることで、大スケールに現れるバイアスの大きさを測定するとともに、弱重力レンズ効果を用いて銀河団の質量を測定し、銀河団の質量に依存するバイアス成分を取り除き、アセンブリ・バイアスを取り出すことを試みた。その結果、銀河団の現在の質量の20%に達する時刻でサンプルを分けた場合、サブサンプル間のバイアスの大きさの違いを6sigmaで検出した。これは、観測的に銀河団の形成時刻を推定するのが困難な状況の中、実際の大規模構造を再現するN体シミュレーションを用いることでアセンブリ・バイアスを検出しようというユニークな研究である。この結果は論文としてまとめ(arXiv:2202.01795)、現在査読中である。 また、スプラッシュバック半径に関しては、eROSITAサーベイで得られたX線銀河団サンプルとHSCで観測された銀河の銀河団-銀河相互相関関数を測定することでX線輝度とスプラッシュバック半径の大きさの相関を調べる研究をIUCAAのSurhud More氏と開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アセンブリ・バイアスの研究が論文としてまとまり、スプラッシュバック半径に関する研究もスムーズに開始することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回はN体シミュレーションを利用してアセンブリ・バイアスの検出を試みたが、来年度はX線やマイクロ波といった多波長のデータを組み合わせてサブサンプルを作成し、アセンブリ・バイアスを検出することを試みる。また、スプラッシュバック半径の測定を完了し、その理論解釈を行う。
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