公募研究
学術変革領域研究(A)
ヒトの体内では、数百種類のGPCR (Gタンパク質共役型受容体) と呼ばれる膜タンパク質が、様々なホルモンや神経伝達物質の受容体として機能しています。GPCRに作用する薬物は、GPCRと非共有結合により弱く相互作用して、結合・解離を繰り返しており、薬物がGPCRに滞在する時間(滞在時間)は、薬効を規定する重要なパラメータです。 この研究では、溶液中におけるタンパク質の動的な構造を解析できるNMR法を用いて、GPCRの薬物結合部位近傍の構造が、滞在時間に応じてどのように変調するかを明らかにすることで、GPCRと薬物の滞在時間の制御機構を解明することを目的とします。
昨年度までに、アデノシンA2A受容体(A2AAR)のリガンド結合部位に位置するA165, A265のメチル基に由来するNMRシグナルを観測・帰属した上で、A265の1H化学シフトが、E169-H264の塩橋の構造を反映することを示した。今年度は、滞在時間が野生型の1/10程度まで低下することが報告されているT256A変異を導入したA2AARにおける、アラニン残基およびメチオニン残基のメチル基のNMRシグナルを、滞在時間が比較的長いZM241385が結合した状態で観測した。その結果、A265に由来するシグナルの1H化学シフトが、滞在時間が1/60程度に減少するE169Q変異体と野生型の中間的な値となり、滞在時間と相関することが判明した。また、滞在時間がZM241385の1/8程度であることが知られている、LUF5834が結合した状態においても、A265の1H化学シフトがE169Q変異体と野生型の中間的な値となり、滞在時間との相関がみられた。T256A変異体におけるA265の化学シフトが、野生型とE169Q変異体の中間的な値となる現象は、完全作動薬NECAが結合した状態においても、またA265に近接するM270に由来するNMRシグナルにおいても観測されたことから、A2AARの活性化状態にかかわらずA265の化学シフトが滞在時間と相関すること、これらの化学シフトが構造変化を反映することが示唆された。以上の結果から、T256A変異導入時やLUF5834結合時には、E169Q-H264の塩橋が部分的に崩れた構造となることで、中間的な滞在時間を示すと考えた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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