研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05585
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深津 晋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60199164)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2022年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 擾乱の透明化 / 2光子相互相関 / エンタングル光子対 / 不活性化部分空間 / 圧縮センシング / 2光子干渉 / パラメトリックエネルギー下方変換 / Hong-Ou-Madelディップ / 不活性部分空間 / 全電子型時間ドメインゴーストイメージング / 反復フーリエアルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
イメージングの物理系は、最も簡単には点光源の集合・光検出器・光伝播経路からなる。光が伝播する経路上で誘電率分布が変化すると伝播光の空間モード(進行方向)・振幅・位相が変化し、その結果、取得されるイメージが変調を受ける。したがって本研究領域が目指す「散乱透視」を極端に単純化すれば、この「誘電率分布の変化」すなわち「擾乱」の影響をいかに抑制し、克服するかにあるとも言える。本研究は、従来、1光子の物理の範囲で考えられてきたこの難題を「2光子の物理」を用いて解決しようとする新たな取り組みである
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研究実績の概要 |
初年度には2光子を利用した擾乱耐性の原理検証を行うべく、購入物品が揃うのを待つ形で観測系の整備と要素技術の検証を行った。まず、2光子干渉に関しては光源の整備を行った。パラメトリックエネルギー下方変換の効率に照らしてBBO結晶からPPKTPへの変更を検討し、nWの励起レベルでも可能なことを検証した。温調によるビーム様2光子発生とフィールド展開を意識したLEDポンプの干渉実験を行い、明瞭なHong-Ou-Mandelディップを確認した。一方、 エンタングル光子対の不活性部分空間に関しては、光ファイバを集団雑音路としてエンタングル2光子の偏光擾乱耐性を調べた。予測どおり一重項でのみ擾乱が抑制され、三重項はほぼ完全にデコヒアしたが、これは1光子の位相雑音がベクトル的に相殺されるスピンのアナロジーと矛盾しない。また時間ドメインの擾乱透明化を先取りして時間ゴーストイメージングの測定プロトコル改良を試み、時間積分が不要なワンスロット測定の有効性を検証した。検出器のインパルス応答が既知であることが前提となるものの、検出器の応答時間の選別条件が大幅に緩和され、除算操作のみで時間積分型相当の90%超の忠実度のイメージが再生できた。また蓄積時間依存性を反映した非一様なS/N比の時間分布も検証された。さらに新たな取り組みとして全電子型時間ドメインゴーストイメージングと位相回復を利用した入射ビームへの擾乱の相殺を試みた。物性測定への応用を意識した前者では、プログラマブルな振幅および位相マスクを設置してランダムパルスによるマスク再生を試み、デューティ非依存で単調増大する1-10のSN比と70-90%の構造類似度を得た。一方、後者ではシミュレーション結果とどまるが、マスク像の再生における反復フーリエアルゴリズムの有効性が検証でき、擾乱耐性の確保にむけた足がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
購入物品の選別を慎重に行ったことに加え、納入に時間がかかったことが原因で予定していた2光子干渉による擾乱透明化の原理の検証にやや遅れがでている。一方、エンタングル光子対の不活性部分を利用した擾乱透明化に関しては、空間モードの2光子に対する擾乱発生チャネルが集団雑音路の条件を満たすことの検証に時間を要している。しかし、両者とも十分に挽回可能な位置につけており、いずれも当初計画への大きな影響はないものと考えらえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の目標を早い時期に攻略した後、以下の実行可能なプロトコルにしたがって研究を進める。そのため摂動的な擾乱に限定して物理実装と原理の検証を目指し、その後に後方散乱・大振幅ゆらぎや情報欠損など強い擾乱への対処方法を検討する。まずは前年の積み残し課題を消化した後、当初計画どおりに 不活性部分空間を利用したイメージングを試みる。空間モードの2光子干渉イメージング実験系を整備し、集団雑音路における一重項偏光エンタングル状態の擾乱耐性を利用した2次元マッピングを行う。これにより空間ドメインにおける擾乱透視への道筋をつける。さらに前年度の成果と新たに着手した試みに立脚して新機軸の擾乱透明化プロトコルを検討する。とくに時間ドメイン上のゴーストイメージングの技術体系を駆使する。 全電子型ゴーストイメージングにより波動関数の直接測定など光実装できない特性の活用を図る。さらにスペックル相関にしたがって実効的に光伝播経路の摂動的擾乱を抑制したイメージ再生実験系の実装を試みる。またゴースト・プロトコルを用いた同時測定条件の信号雑音比劣化の限界を見極め、圧縮センシングによるブラインドイメージングの可能性を検討するとともに時間ドメイン上での擾乱透明化への先鞭をつけることを試みる。
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