公募研究
学術変革領域研究(A)
研究実施者らは、1細胞レベルでの温度分布を可視化する新規イメージング手法を確立した。そして、アストロサイトには脳温と同等の細胞以外に、発熱や冷たい状態にある細胞が多数存在することを発見した。本研究では、脳内に吸熱源となる特殊なアストロサイトが存在し、一定の脳温を保つことに貢献していることと、そのメカニズムを明らかにする。さらに、アストロサイトの温度状態が変化することで局所的にダイナミックな温度変動が生じ、この脳温グリアデコーディングの結果、局所温度変化が脳温センサーTRPV4を介して、神経活動調節に変換されることを明らかにする。
研究実施者は、1細胞レベルで温度分布を可視化するシステムを駆使して研究を進行した(Nature Commun 2012, J. Neurosci. 2018a)。この系では、fluorescent polymeric thermometer (FPT)を培養細胞や脳スライス標本に取り込ませた後で2波長蛍光イメージングを行い、インキュベーション温度に対する検量線を元に細胞内部の温度を0.02℃の精度と40 nmの解像度で解析が可能である。また、この研究から生命科学領域にインパクトを与える新たな知見を多数見出した。そして、これを用いて培養神経細胞と培養アストロサイトの細胞ごとの温度状態を比較したところ、アストロサイトでは、37℃の外部温度と同等の細胞以外に、発熱や冷たい状態にある細胞が多数存在することを発見した。着目すべきは、環境温度(=体温)よりも冷たいアストロサイトが存在する点である。今回見出された冷たいアストロサイトが脳内で特殊吸熱源となっており、これらの特殊グリアデコーディングの総アウトプットとして、脳が効果的に冷却され、一定の脳温が保たれる可能性が高いと予想している。今回冷たいアストロサイト(cold群)とそれ以外のアストロサイト(normal群)において、その熱産生能の違いを調べたところ、両群で違いが認められなかった。一方、cold群は熱産生からの解消が有意に早いことが明らかになった。細胞を加温する実験を行った結果、cold群は、加温に対する耐性能を有しており、予想通り吸熱細胞としての性質を持つことを明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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