研究領域 | 不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構 |
研究課題/領域番号 |
21H05667
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
祢宜 淳太郎 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70529099)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 気孔葉緑体 / 環境応答 / CO2 / 気孔 / 葉緑体 / プロテオーム / プロテオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
気孔細胞は、植物独自のオルガネラである葉緑体を保持している。近年、我々は気孔葉緑体が光やCO2などの環境情報感知に必須であり、気孔閉鎖を駆動する細胞膜型アニオンチャネルの活性制御に関与することを明らかにした。一方、気孔葉緑体を介した環境情報処理の分子メカニズムは不明である。そこで、独自に開発した気孔葉緑体単離技法を駆使した気孔葉緑体プロテオミクス解析から、複数の環境要因が同時に存在する状況や、刻々と変化する光環境に応じて、それらの環境情報を統括し、最適解を出す鍵となる葉緑体因子を発見する。そして、気孔葉緑体が司る情報処理が、植物の不均一環境適応機構の一翼を担うことを実証する。
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研究実績の概要 |
気孔を構成する孔辺細胞は、植物独自のオルガネラである葉緑体を有しているが、その葉緑体 (Guard Cell Chloroplasts: GCCs) は葉肉細胞の葉緑体 (Mesophyll Cell Chloroplasts: MCCs) と比較してチラコイド膜が未発達であり、デンプンを高蓄積するという特徴を持つ。我々はGCCsが光やCO2などの環境情報感知に必須であり、気孔閉鎖を駆動するアニオンチャネルの活性制御に関与することを明らにしている (Negi et al. 2018)。しかしながら、GCCsを介した環境情報処理の分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、GCCs及びMCCsの葉緑体タンパク質を網羅的に比較解析し、GCCs特異的に発現する機能因子を探索した。新たな試みとして、GCCsを特異的にYFP蛍光ラベルしたシロイヌナズナの形質転換体を作成し、その植物から単離した孔辺細胞プロトプラストを破砕し、蛍光シグナルとサイズを指標にしたセルソーティングによって無傷GCCsを分離した。この新たな手法により高純度かつ大量の無傷GCCsを単離することが可能となった。ここで得られた無傷GCCsと無傷MCCsとのプロテオーム比較解析を行い、GCCsで強く発現するタンパク質を選抜した。GCCで高発現している213タンパク質に絞りGene Ontology解析を行った結果、酸化還元反応、脂質及び糖代謝、リン酸化に関与するタンパク質が多く含まれることが判明した。続いて、GCCsで高発現を示したタンパク質をコードする遺伝子の機能欠損変異体の中から、気孔応答性が低下した複数の変異体を単離した。これらの結果は、気孔開閉を制御する新規GCCタンパク質が存在することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気孔葉緑体で高発現しているタンパク質の中から、気孔開閉制御に関与する新規タンパク質を複数同定することができ、気孔葉緑体の環境感知機能に迫る重要な手がかりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
GCCで高発現するタンパク質は200以上存在するため、さらなる絞り込みが必要である。そこで、リン酸化プロテオーム解析をおこない、環境変化に応答してリン酸化レベルが変化するGCCタンパク質にターゲットを絞り込む計画を進めている。さらに、気孔応答が緩慢になっていた候補因子の局在解析、機能解析を進めることで、気孔葉緑体が担う環境情報処理機能の鍵となる葉緑体因子を同定する。
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