研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
21H05713
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅲ)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
市之瀬 敏晴 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20774748)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | タンパク質翻訳 / ストップコドンリードスルー / リボソームプロファイリング / ショウジョウバエ / 神経系 / タンパク質翻訳制御 / トランスジェニックレポーター |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、終始コドンを超えて3’ UTRまで翻訳が継続するストップコドンリードスルーの解明を目指す。この現象は、これまで翻訳のエラーであると考えられてきたが、終止コドン後のアミノ酸配列の進化的保存性などから、機能的生命現象であることが強く示唆される。本研究ではショウジョウバエのゲノム工学を活用し、内在性終止コドンの改変等を通して、リードスルーの制御および機能を個体レベルで検証する。さらに、シス領域探索とRNAiスクリーニングを行い、リードスルーを引き起こす分子メカニズムの解明を目指す。これにより、リードスルー現象の生理的意義とメカニズムを立証し、タンパク質世界の新たな一面を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、終止コドンを超えて3’ UTRまで翻訳が継続する「ストップコドンリードスルー」に着目した。同現象は、終止コドン後のアミノ酸配列の進化的保存性などから、機能的生命現象であり、未開拓のタンパク質翻訳制御機構であることが想定されている。先行研究によって、ストップコドンリードスルーは神経系で特に生じやすいことがいくつかの遺伝子について知られているが、その全体像は明らかではなかった。これを明らかにするため、申請者はショウジョウバエの神経細胞をモデルに、ゲノムワイドな翻訳プロファイリングを行った。その結果、神経細胞においてストップコドンリードスルーが生じている遺伝子を数百個単離することに成功した。この遺伝子について、ストップコドンリードスルーによってタンパク質の生理的機能や細胞内局在が変化していることが想定される。そこでトランスジェニックレポーターを用いてリードスルー産物の細胞内局在を可視化した。その結果、複数の遺伝子について、リードスルーによってタンパク質の細胞内分布が大きく変化することが明らかになった。これは、リードスルーによって新たなタンパク質ドメインが付加され、細胞内局在を変化させたと考えられる。これに加え、in slicoタンパク質構造予測を行った。その結果、リードスルーにより天然変性ドメインに富んだアミノ酸配列が付加されることが明らかになった。以上本研究により、ストップコドンリードスルーによって付加されるペプチド配列の全貌と、その生理学的な意義の一端が明らかになったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リードスルーは神経細胞においてよく生じることが知られているが、どの遺伝子で生じるかについての知見は断片的であった。本研究は神経細胞特異的にリボソームプロファイリングを行うことで、神経細胞においてリードスルーが起きている遺伝子をゲノムワイドに同定した。さらに、レポーターによってタンパク質局在変化を明らかにしたことは、その生物学的意義を考察する上で重要な知見であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
トランスジェニック技術を用いて、リードスルーを人工的に引き起こした個体、また、リードスルーを抑制した個体を作成し、その解剖学的特徴の解明と行動学試験を行うことで、ストップコドンリードスルーの生物学的意義がどんなものであるか、直接的に検証したい。
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