研究概要 |
本研究の目的は超高圧環境を利用した新規ユビキタス元素化合物の合成である.具体的には高分子前駆体を用いたC-N(-H)系物質合成や超臨界二酸化炭素や水を用いた新規形態を有する物質合成をおこなった.有機物前駆体を用いた研究では30万気圧までの圧力範囲においてトリアゾールを前駆体に用いることで,バラ状形態を有する炭化窒素の合成やメラニン類似構造の新規物質の合成に成功した.また,水や二酸化炭素の超臨界流体を用いた研究ではカーボンナノチューブや中空角柱状形態を有する物質の合成に成功した.中空角柱状形態を有する物質の合成では,光触媒として有名なルチル型構造を有するTiO_2を対象に研究をおこなった.過去に,我々の研究から超高圧下非平衡場においてルチル型結の晶構造を有する物質が中空角柱状の形態として成長することが明らかにされていたので,同じ結晶構造であるTiO_2も同様に中空の各柱状結晶が得られ可能性があり実験に着手した.実験はチタン箔を純水中で数万気圧に保持し,過去のGeO_2の研究と同様,一箇所を瞬間的に加熱した.回収物の形態および方位観察から中空角柱状のルチル型TiO_2単結晶を多数得ることに成功した.過去に別の研究者が我々と同様水中に置いた金属箔にパルスレーザーを照射し回収物を分析したという結果を報告しているが,その研究は常圧時において行われたもので,ナノサイズのTiO_2結晶は合成されたが中空状のチューブ結晶が合成されたという報告は無い.従って,我々が用いた『超高圧高温超臨界流体』が中空角柱状結晶の合成に重要な役割を果たしたものと思われる.こうした研究は新しい材料合成プロセスの確立を目指すうえで非常に重要であり,特定領域研究の大きなテーマでもあるユビキタス元素物質の材料開発に大きく貢献したものと思われる.
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