研究領域 | 配列ナノ空間を利用した新物質科学:ユビキタス元素戦略 |
研究課題/領域番号 |
22013021
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中野 智志 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 主幹研究員 (50343869)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
2011年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
2010年度: 2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
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キーワード | 配列ナノ空間 / クラスレート / 超高圧 / 静水圧 / ヘリウム / 構造変化 |
研究概要 |
本研究は、異方性のある配列ナノ空間が静的圧力に対してどのような圧力応答を起こすのか、静水圧性の高いヘリウム圧力媒体による準静水圧環境で構造・物性変化の詳細を明らかにすることにより、B_<12>クラスター化合物やSi,Geクラスレートなどの配列ナノ空間物質の特異な物性発現のメカニズムを解明することを目的としている。 今年度は、特に室温でTc=0.24Kの超伝導を示す構造I'型クラスレートBa_<24>Ge_<100>について、ヘリウム圧力媒体を用いた低温高圧in-situ X線回折測定を行い、超伝導状態近傍での精密構造解析を行い、超伝導物性と構造との関係を調べた。特に、リートベルト解析により求められた原子変位パラーメターから、Geケージ内のBaイオンのラットリング挙動と物性との関係を調べた。その結果、100K前後で起こる低温相転移温度T_<s2>以下では、Ba_<24>Ge_<100>のopen cage内にあるBaイオン(以下、Ba(3)を表記)が大きな原子変位を起こした。これはBa(3)のラットリング挙動に対応しており、超伝導転移温度Tcが低く押さえられる原因と考えられる。しかし、この原子変位は圧力の上昇とともに徐々に抑制され、2.1GPa以上では原子変位の増大は見られないことが明らかになった。これは、圧力の上昇とともにTcが上昇し、2.3GPa付近でTcが上限に達する従来の物性測定の結果に対応しており、圧力上昇によるラットリング挙動の抑制がBa_<24>Ge_<100>のTcの変化を決めていることが、始めて実験的に明らかになった。このほか、温度一定で圧力を変化させて、Ba_<24>Ge_<100>の温度・圧力相図の検証を行った。 このほか、α-ホウ素のヘリウム圧力媒体を用いた高圧ラマン散乱実験は、現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、Ba_<24>Ge_<100>の超伝導発現機構に関する結論を導くたために低温高圧ラマン散乱実験は必須であると考えていたが、構造解析の結果、ラットリング挙動と超伝導発現との関係が極めて明瞭に捉えられたため、ラマン散乱実験を必要とせずとも一定の結論は出たと考えている。 α-ホウ素のMBar領域の高圧ラマン散乱測定実験は現在進行中であり、ほぼ結論が見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
Si,Geクラスレートについては、今回の結果を受けて新たな関心が高まった。Ba_<24>Si_<100>のアナロジーで言えば、Ba_<24>Ge_<100>はやがて圧力上昇とともにTcが低下すると予想されるがその段階で構造的特徴が現れるのか、また、室温では約10 GPaから徐々にアモルファス化を起こすが低温でも同様のことが起こるのか、またそれが物性にどのように反映するのか、興味深い。これらは電気伝導測定と構造解析の圧力範囲の拡大で知ることができ、現在の実験技術でも達成可能である。 B_<12>クラスター化合物については、α-ホウ素はあくまでも最も単純な物質の例として対象としたものであり、今後、B_<12>クラスター間にB,C,Oなどの元素を持つ物質(B_4CやB_6Oなど)へと展開することにより、B_<12>クラスター化合物の圧力応答と物性との関係の全体像が明らかになると考えている。
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