研究概要 |
KcsAの膜貫通部にのみ着目して,DIORITE法によるKcsAの閉構造状態・開構造状態での立体構造解析を目的として以下の実験を行った. 1. DIORITE解析のための分子配向条件の最適化: 昨年度までに膜貫通部のシグナル帰属を終えたため,今期はDIORITE法を用いた構造解析を中心にすすめた.特にhelix間の相対配向を決定するために必要な情報を得るために十分な強度で分子配向させる測定条件の探索を行った.最終的に,タンパク質濃度をかせぐために重水素標識をしないで^<15>N標識のみを適用した.また,解析に不要な膜貫通部以外のシグナルを消すために重水で調製した緩衝液を用いて測定を行った.最終的に最適な異方性圧縮アクリルアミドゲルの条件を決定でき,最大で8Hz程度の配向依存的なTROSYシグナル変化を観測できた.Helix間の配向変化を解析するための構造計算の準備を進めている段階である. 2. 開構造を安定にするための変異体調製: 我々の試料調製では,KcsAをSDSミセルで可溶化したサンプルを用いている.この条件では,良好な^1H-^<15>N相関シグナルを与えるために構造解析には適しているが,ゲートが開く酸性条件にするとKcsAの4量体構造が崩れて単量体になるという問題がある.このため,中性条件でゲートが開く変異体を用いてゲートの開構造を解析することを計画した.H25R/E118A/E120Aの3重変異体は中性付近で高頻度に開構造を取ることが分かっているが,大腸菌での発現が低くサンプルを大量に調製することが困難であった.次の候補として作成したE71A変異体では,十分な量のサンプルを得ることができたが,膜貫通部のみを残すサンプルとするために細胞内ドメインを切り出すと4量体が不安定になる問題が合った.H25Qでは,得られる資料の量・安定性ともに問題がなくこのサンプルを用いて研究を更に進める.
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