研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
22018023
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
三枝 洋之 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (90162180)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
2011年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2010年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 核酸塩基ヌクレオチド / レーザー脱離法 / 超音速ジェット法 / 赤外振動スペクトル / 非調和振動計算 |
研究概要 |
DNAやRNAは、核酸塩基ヌクレオチドを単位として構成されるが、その高次構造はヌクレオチドのいくつかのコンフォメーションを巧みに制御することで形成されている。本研究では、グリコシド結合まわりのコンフォメーションを、化学修飾法を用いて制御することを試みた。またヌクレオチドの最終分解物である尿酸の疎水性的性質について水和クラスターを用いて検討した。これらの核酸塩基類は熱的に不安定であるため、レーザー脱離-超音速ジェット法により気相孤立化し、赤外振動分光法と非調和振動計算を駆使し立体構造の決定を行った。 (1)尿酸の疎水的性質を水和クラスターの立場から検討:人や霊長類におけるプリンヌクレオチドの代謝過程では、最終分解生成物である尿酸が生成し、尿に排泄される。尿酸は難溶性で体内に蓄積されやすいため、痛風など多くの病気を引き起こす原因となる。本研究では、尿酸の疎水的性質を分子論的に明らかにするために、水和クラスターの立場から検討することを試みた。赤外振動スペクトルによる水和構造解析から、尿酸では第一水和圏に水和しても、その後水和ネットワークを形成しにくいため、疎水性を示すものと結論した。 (2)化学修飾によるヌクレオシドのグリコシド結合コンフォメーション制御:DNAやRNAの立体構造の柔軟性は、ヌクレオチドのいくつかのコンフォメーションにより制約される。更にそれぞれのコンフォメーションは、糖-リン酸基骨格の6個の二面角とグリコシド結合まわりの塩基の二面角で決定される。このうちグリコシド結合についてはsynとantiという2つの安定なコンフォマーが存在し、通常のDNAではanti、Z-DNAではsyn構造をとる。本研究では、気相孤立化したグアニンヌクレオシドについて、このコンフォメーションの安定性を制御することに成功した。グアノシンでは5'-OH基の内部水素結合によりsyn構造が安定であるが、これをエチル化にした5'-O-ethylguanosineでは、2'-OH基の水素結合によるantiが優先的に観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度の研究成果のうちいくつかは既に学術論文として公表されているが、現在投稿準備中の論文が3報ある。 これらの成果はすべて、共同研究(イリノイ大、愛知工業大学、名古屋大学、新潟大学)が順調に進んだことにより得られた
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今後の研究の推進方策 |
今後、2つ以上の核酸塩基が糖-リン酸基で結合した、ジヌクレオチドやポリヌクレオチドを気相孤立化し、実在系により近い環境での塩基間の相互作用とそれによる高次構造形成について研究を行う予定である。既にジヌクレオチドについては、共同研究者により合成された試料を用いて測定を行っているが、脱離レーザー光照射によりかなりの割合で分解してしまう問題点が明らかとなった。現在これを克服するために、リン酸基のエステル化などの化学修飾、レーザー波長やマトリックスの最適化を行っている。
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