公募研究
特定領域研究
多くの動物細胞では、増殖サイクルの進行と一次繊毛形成は相反することが知られている。細胞が休止期に移行すると、中心体は基底小体に変換され一次繊毛が形成される。一方、増殖相に再入すると中心小体は複製を開始し、基底小体は紡錘体極として機能する。しかし、細胞周期依存的な中心体-基底小体変換の分子機構は不明である。本研究では、細胞増殖抑制シグナル依存的な中心体-基底小体変換を制御するシグナル機構を解明することを目的として研究を行った。網膜色素上皮(RPE)細胞を血清飢餓条件で培養すると中心体から基底小体への変換と一次繊毛の形成が誘導されるが、この過程においてRab11,Rab8が必須の機能を持つことが報告されている。私達は真核生物に高度に保存され、増殖抑制経路に関与することが知られているSer/ThrキナーゼであるNDRがRab8の活性化因子(GEF)であるRabin8を特異的にリン酸化すること、また、NDRやRabin8の発現抑制によって繊毛形成が阻害されることを見出した。さらに、NDRによるリン酸化依存的にRabin8に結合する蛋白質として14-3-3を同定した。NDRの発現抑制やRabin8の非リン酸化型変異体の発現により、Rabin8やRab11を含む輸送小胞が中心体近傍に集積することを見出し、NDRによるRabin8のリン酸化は小胞の融合による繊毛膜の形成に関与することが示唆された。また、Rabin8とRab11はRab11の活性依存的に結合し、Rab11に結合できないRabin8変異体は中心体に集積しないことから、Rabin8の中心体付近への輸送にはRab11との結合が必須であることが明らかになった。また、NDRの発現抑制によってKi-67陽性細胞の数は変化しないことから、NDRの発現抑制は細胞休止期から増殖相への変換制御には関与しないことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
研究目的に掲げたNDRによる中心体-基底小体変換と一次繊毛形成機構の解明について、NDRの基質の同定、リン酸化の繊毛膜形成における機能を解明することができたことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
血清飢餓による細胞増殖の停止は、NDRの発現抑制によって影響を受けなかったことから、細胞増殖制御と中心体-基底小体変換には別の経路の関与が示唆される。今後は、一次繊毛形成と細胞増殖制御をリンクさせる別経路を探索することが必要である。
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http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/