研究領域 | 細胞周期フロンティア-増殖と分化相関 |
研究課題/領域番号 |
22019006
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
服部 浩一 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (10360116)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
2011年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2010年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
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キーワード | プラスミノーゲン / マトリックスメタロプロテイナーゼ / 骨格筋転写調節因子 / 細胞周期調節因子 / 筋サテライト細胞 / 細胞外ドメイン分泌 / 組織再生 / ストローマ / 血液線維素溶解系 / 骨格筋転写因子 / S期 |
研究概要 |
本研究では、生体筋組織における骨格筋細胞の増殖・分化機構の解析を通じて、骨格筋転写因子と細胞周期調節因子との相互作用とこれらに対する各種プロテアーゼの役割を明らかにすることを目的としている。今年度の研究で、代表者らは、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)の遺伝子欠損マウスとその野生型で、マウスの大腿動静脈の結紮による虚血肢モデルを作製したところ、遺伝子欠損マウスでは、虚血壊死筋組織中のストローマ細胞の集籏が野生型と比較して有意に遅延すること、筋サテライト細胞の増殖因子と考えられているHGF、IGF等の細胞外ドメイン分泌に障害を有することを明らかにした。また、この時MMP-9遺伝子欠損マウスでは骨格筋転写因子MyoDの発現、さらにcyclinD1、cydin D3等の細胞周期調節因子の発現増加も認められた。MMPは、潜在型酵素ProMMPから活性型MMPへの変換によって活性化されるが、近年、血液線維素溶解系因子に属するプラスミノーゲンの活性化により生成するプラスミンが、MMPの活性化を制御していることが明らかとなっている。代表者らは、組織型プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)を虚血肢モデルに投与することにより、虚血壊死筋組織中のストローマ細胞の増加、そしてMMPの活性化、Kit-ligand、HGF及びIGFの分泌促進等を介して虚血壊死筋組織の再生を促進することに成功した。またtPAの投与は、虚血壊死筋の骨格筋転写調節因子、細胞周期調節因子の発現を増加させることから、筋サテライト細胞からの分化、細胞周期移行を促進しているものと考えられた。本研究は、MMPや線溶系酵素等の各種プロテアーゼの活性と骨格筋系細胞の細胞周期制御及び分化・増殖制御機構との密接な関連性を示唆しており、骨格筋細胞の分化相と増殖相のバランス基盤の理解に重要な一端を明らかにしたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液凝固・線維素溶解系やMMPに代表されるプロテアーゼ活性と骨格筋分化決定因子、細胞周期調節因子との関連性、相互作用を見出しただけでなく、筋組織再生におけるプロテアーゼ活性の意義ついてある程度の考察がなしえたこと、さらにこれらに関する論文報告も出来たことから。
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今後の研究の推進方策 |
1.生体内では、プロテアーゼ活性が、増殖因子を介して骨格筋細胞の分化相と増殖相の移行に関与していることは明らかとなったが、分化相と増殖相のバランスを調節するメカニズムにおけるプロテアーゼ、増殖因子の果たす役割の詳細を明らかにする。 2.本研究成果を基礎として、骨格筋細胞の分化・増殖、細胞周期移行の促進を誘導している可能性が見出されたtPAやこれに類する薬剤については、組織再生促進療法への応用の期待も掛かる。今後、その有用性、安全性について創薬、トランスレーショナルリサーチからの観点で研究を進める。
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