研究概要 |
細胞周期において、次のサイクルでの染色体複製の準備が、M期終期においてなされる。我々は、M期中期においてCdt1はリン酸化され安定に存在することを見出した。リン酸化解析により、Cdt1とサイクリンA-CDKの結合に関わるCy領域近傍にM期に高度にリン酸化が検出された。これまでPlk1とCDK1-サイクリンBがリン酸化に関わる結果を得ており、これらのリン酸化がCRL1-Skp2ユビキチンリガーゼの認識をブロックすることによりCdt1安定化に寄与すると捉え分子機構の解析を進めた。 1.M期においてCdt1がCRL4-Skp2による分解から保護されていることを確認するため、同様にCRL1-Skp2により分解されるp27を融合したCdt1-p27を安定に発現する細胞を作成し、M期での安定性を調べた。Cdt1-p27は、M期で分解され、またMG132で抑制されたので、CRL1-Skp2はM期でも活性があるが、Cdt1は、CRL1-Skp2による分解から保護されていることを確認した。 2.Plk1とCDK1-サイクリンBの阻害剤を用いて、これらのキナーゼを抑制しM期からG1期にリリースしてMCMタンパク質のクロマチン結合を指標にライセンス化を調べたところ、両キナーゼを抑制するとライセンス化が抑制される結果を得た。 3.Plk1が結合するCdt1の領域を、欠失変異体を作成し調べた所、N末端150アミノ酸領域に強い結合が見られた。この領域に存在するCy領域近傍のリン酸化部位(73,78,79,82,93)の変異体を作成し、精製Plk1およびCDK1-サイクリンBキナーゼを用いてin vitroでアッセイした。これら5カ所すべてに変異をいれると、Plk1、CDK1-サイクリンB両方によるリン酸化が低下した。アミノ酸配列による考察と2変異および3変異体を用いた結果より、Plk1は主に73と93、CDK1-サイクリンBは79,82,93をリン酸化すると考えられた。 以上より、Plk1およびCDK1-サイクリンBがCdt1をリン酸化することによりM期に分解から保護しており、M期終了時に確実に複製のライセンス化を行なうことにより、遺伝情報の維持に寄与すると考えられる。
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