公募研究
特定領域研究
これまで易凝集性タンパク質や病原性微生物などのオートファジーの選択的基質p62などのアダプタータンパク質を介してオートファゴソーム局在タンパク質LC3と結合し、選択的に分解されると考えられている。しかしながらその分子機構には十分に検証されていない。そこで我々は、オートファジー関連因子(ATG遺伝子)をノックアウトした一連の細胞を用いて、Atgタンパク質の基質への局在階層性を解析した。その結果、これまでのモデルとは大きく異なり、LC3に依存せずに他のAtgタンパク質が選択的基質上に局在することを明らかにした。その中でも選択性に重要であると考えられるAtg16L1複合体の局在化機構に焦点を絞りさらに解析を進めた。Atg16L1複合体はLC3システムのE3様因子として働く因子である(Fujita et al.,2008)。基質選択的オートファジーにはユビキチン化が重要であると考えられていることから、Atg16L1とユビキチンとの結合の有無を調べたところ、Atg16L1分子はC末端側の機能未知のWDリピートドメインを介してユビキチン鎖と直接結合した。さらに我々は、Atg16L1はFIP200(酵母Atg17の哺乳類ホモログ)とも直接結合することを見出した。ユビキチン、FIP200それぞれ片方との結合を抑えても大きな影響は見られないが、双方との結合能を失わせたAtg16L1を発現させた細胞ではオートファジー能は有意に低下した。これらの結果から、Atg16L1複合体はユビキチンとFIP200との結合を介して選択的基質上に局在していると考えられる。このように今回の結果から、LC3やアダプタータンパク質に依存しない選択的オートファジーの新たな分子機構が明らかになった。
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