研究概要 |
分子シャペロンの一つであるシャペロニンの機能発現機構について更なる継続的な研究を行い,以下のような成果を得た。 1:シャペロニンGroELの円順列変異導入による機能解析 GroELのアピカルドメインに新たなN末端とC末端を導入した,円順列変異体を3種類作成し,その構造形成能とシャペロニンとしての機能評価を行った。その結果,3種類とも野生型と同様な構造をとっており,ATPase活性はほぼ同じであった。また,ローダネーゼの再生反応についても効率は若干低下するものの野生型と同程度であった。しかし,アピカルドメインの動きをストップドフローで調べたところ,野生型とは異なっており,新たな末端導入による柔軟性の影響が見られた。このような円順列変異方法はシャペロニンの機能解析に有効であることが明らかになった。 2:Thermoplasma acidophilum由来の単量体シャペロニンの凝集抑制に対する効果 T. acidophilum由来のシャペロニンは細胞内外で単量体として多く存在していることを我々は独自に発見している。この単量体シャペロニンの機能をSup35タンパク質のアミロイド線維形成抑制効果を指標にして蛋白質化学的に詳細に調べた。その結果,Sup35蛋白質のアミロイド線維形成を抑制する働きがあることを発見した。単量体シャペロニンは3つのドメインからなっており,その中のアピカルドメインがSup35のアミロイド線維形成抑制効果に効いていること,さらにその中のヘリカルプロトルージョン部分に相当するペプチドだけでも効果があることを明らかにした。これらの結果は,シャペロニンのサブユニットとしての新たな機能を示しており,大いに注目すべき例である。
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