公募研究
特定領域研究
本年度は、生体内で起こる生理的小胞体ストレス応答のシグナル解析および小胞体ストレスセンサーの活性化機構の解明を目指した。得られた結果について以下に記載する。1)小胞体ストレスセンサーOASISによる消化管杯細胞の分化制御:OASISは消化管の杯細胞に極めて強く発現している。OASIS欠損マウスの大腸粘膜では、成熟杯細胞が減少し、分化が進んでいない未成熟杯細胞が増加していた。ヒト結腸癌細胞LS174T細胞に酪酸ナトリウム処理で杯細胞への分化を誘導するモデルを用い、分化過程での小胞体ストレスについて検討した。その結果、杯細胞の分化時に軽度の小胞体ストレスが生じていることがわかった。このことから、杯細胞の分化・成熟過程では一過的な軽微な小胞体ストレスが生じ、それに応答してOASISが活性化し粘液顆粒形成の促進などを通して杯細胞の分化・成熟を促すことが強く示唆された。2)小胞体ストレスセンサーOASISおよびBBF2H7の活性化機構:OASISおよびBBF2H7は、通常の状態で分子シャペロンBiPと結合しないことから、ATF6とは異なる新規の活性化メカニズムを有する。タンパク質合成阻害剤cycloheximide等を用いたOASISおよびBBF2H7の生化学的特性の解析により、両タンパク質は、通常の状態では小胞体関連分解(ERAD)で構成的に分解されるが、小胞体ストレス状態になると安定化することが明らかとなった。OASISおよびBBF2H7の特異的なE3ユビキチンライゲースを同定するために、ERADに関与する各種E3ユビキチンライゲースのsiRNAを骨芽細胞および軟骨細胞に導入し両分子のタンパク安定性を検討したところ、小胞体膜に局在するE3ライゲースのHRD1が両分子の分解に関与することが明らかとなった。以上の結果から、OASISおよびBBF2H7は、通常の状態ではHRD1と結合し構成的にユビキチン化され速やかに分解されるが、小胞体ストレス時にはHRD1との結合が解離することで安定化することがわかった。
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IUBMB Life
http://home.hiroshima-u.ac.jp/imaizumi/