研究概要 |
本研究では,統合国際深海掘削計画(IODP)において南海トラフ地域で掘削されたExpedition 315のC0001,C0002および316のC0004のコア試料を用いて,後期中新世から後期更新世までの過去50Maの底生有孔虫化石群集を解析した.これらのコアの年代に関しては,石灰質ナノ化石の示準面とGloborotalia inflataの酸素同位体の層序により決定した.C0001コアでは,表層から130mまでの区間が,MIS7からMIS38の期間に相当することが明らかとなった.さらに,このコアでは200m付近に不整合が存在し,下底は後期中新世に至る.C0002コアは,石灰質ナノ化石より0.065Maから1.04Maの期間の堆積物であると思われる.一方,付加体であるC0004コアはUnit1とUnit4,Unit2とUnit3が同じ年代を示し,地層が何度も繰り返している. 底生有孔虫化石に関しては,C0001,C0002,C0004の465試料から101属267種の有孔虫を同定し,群集組成からC0001を10つの化石帯,C0002を4つの化石帯,C0004を5つの化石帯に区分した.その結果,C0001とC0002は,ほぼ連続的に堆積しているが,C0004は断層により分断され,数回繰り返していることが,底生有孔虫の群集からも支持される.特にC0001の表層から200mまでのコア試料を詳しく検討した結果,氷期にはMelonis, Fontobotia, Bulimina属が増加し,間氷期にはUvigerina, Gyroidina, Hoeglundina, Pyrgo属が増加する傾向がみられた.C0002も同様に.漉10盟亀.Melonis, Fontobotia, Bulimina属の増加する層準と,それと逆相関するようにUvigerina, Gyroidina, Hoeglundina, Pyrgo属の増加する層準がみられ,C0001と同様に氷期-間氷期変動に反応していると考えられる, C0001のUnit1(斜面部)における古水深は,2.0Ma前後には1000~2000mで,時代が新しくなるにつれ,徐々に深化し,0.2Ma所後には2000~3000mに達したと推定される.C0001のUnit2の付加体の部分では,Nuttallides umbonideraが断続的に産出することから3500m以深で堆積したと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災により2011年3月より半年以上,研究が停止した.また,試料等の散逸も生じ,再び研究資料を整備し直すのに時間がかかってしまった.しかし,出版予定が遅れているものの,予定したコア試料の解析はほぼ終了し,年代モデルの作成も終了した.1年間の遅れはあったものの,その目的はほぼ達成しつつある.
|