研究概要 |
四国海盆の層序において,堆積層解析により半遠洋性とイベント性堆積作用を分離して調査を行ったところ,はっきりとした地史イベントのシグナルが発見された.四国海盆のDSDP,ODP,IODPによる掘削コア試料の分析結果から,1地点を除くすべてのサイトにおいて,3Ma前後で半遠洋性堆積速度が倍増していることが発見された、堆積速度増加のタイミングに関しては地点ごとに2-4Maと多少のばらつきがあるものの,半遠洋性堆積速度の上昇量は一様であり,この地域に何らかの理由で四国海盆への堆積物供給速度が増加したことは明らかである.一方,タービダイトの堆積速度および堆積頻度も増加していることが分かったが,増加のタイミングや両は極めて局地的であり,タービダイトが全く見られない地点もあった.このことは,重力流により運搬されるタービダイトが局地的な地形に支配されるのに対し,拡散で移動する半遠洋性泥はより広域的な状況を反映することを物語っている. 半遠洋性堆積速度の増加原因は,西南日本島弧の隆起速度変化に求めることが最も妥当であろう.すなわち,西南日本島弧の隆起速度は3Maごろに変化したということになる.もちろん,堆積物供給量の変化には他にもさまざまな要因が考えられる.しかしながら,粘土鉱物組成を検討結果からは,中新世に見られたようなスメクタイトからイライトへの組成変化は見られなかった.したがって,供給源の火成活動の変化などが堆積物供給量変化の原因であるとは考えづらい.半遠洋性堆積速度の空間分布を考慮すると,堆積物の主要な供給源は風成塵などではなく,西南日本外帯の堆積岩・変成岩と解釈することができる.今後は,独立した手法によりフィリピン海プレートの運動方向変化のタイミングをつかむことができれば,隆起速度変化とプレート運動方向変化のタイミングについて,さらにはそれらの成因的な関連について理解を進めることができるだろう.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,より詳細な組成解析により半遠洋性泥の供給源の解析や年代層序の高精度化により,さらに議論を深める予定である.また,独立した手法によりフィリピン海プレートの運動方向変化のタイミングをつかむことができれば,隆起速度変化とプレート運動方向変化のタイミングについて,さらにはそれらの成因的な関連について理解を進めることができるだろう.
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