研究概要 |
本研究は,プレート沈み込み帯に持ち込まれる堆積物中にデコルマゾーンが形成されるメカニズムの解明を目指すものである.室戸沖南海付加体では,粘土鉱物が弱くセメントされた層準にデコルマゾーンが発達することが報告されている.弱くセメントされた泥質岩は,繰り返し載荷に対して脆弱であるという性質があるため,デコルマゾーン形成メカニズムにはプレート境界特有の有効応力変動(地震波や間隙水圧の伝播などに起因)が鍵を握っていると考えた.本研究では,この有効応力変動を再現できる圧密試験機(等方圧密)を開発した.試験機は,最大封圧20MPa,封圧変動を最速5Hz与えられる仕様である. 本年度は,主に房総半島の海溝斜面堆積物(堆積年代は約2.8Ma)を用いて試験を行った.試験は,通常の圧密試験(封圧変動なし)によって得られた降伏圧密強度までいったん封圧を上昇させ,そこから任意の周波数・応力変動を与えた.等方圧密方式を採用しているため,理論的には組織の異方性には変化が起こらないはずである.実際,通常の圧密試験後の試料と試験前の試料では,異方性に違いは見られなかった.ところが,封圧変動を作用させると地層面に平行な方向に面構造がより発達する.試料を地層面に対して垂直および水平に整形しても同じ結果が確認されたことから,異方性は堆積構造異方性がより強調される傾向にあることが判明した.これらの結果は,上載荷重による圧密に比べ,有効応力変動による組織改編および物性変化が劇的なものであることを示している.プレート沈み込み帯のような変動帯では,これらを評価することが必要である.また,デコルマゾーンが形成されるメカニズムの解明をめざし,昨年行われたExp.333で採取された,デコルマゾーンの材料物質というべきセメント層準を採取した.今後これら試料を用いてデコルマ形成の再現試験を行う予定である.
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