研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
22108531
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田所 誠 東京理科大学, 理学部, 教授 (60249951)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2011年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2010年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 水素結合 / 混合原子価 / レニウム錯体 / プロトン移動 / 電子移動 / PCET / 誘電率 / 分子デバイス / 金属錯体 / 混合原子価状態 / 外圏電子移動 / 超分子 / 誘電体 / 価数後変異性 |
研究概要 |
電子を媒体とするエレクトロニクスは、物理や化学の学問分野を基礎として、コンピューターや情報伝達機器など、私たちの文明にとって必要不可欠なあらゆる機器の動作原理を担っている。しかし、現在ナノサイエンス・ナノテクノロジーの発展により、コンピューターや電子機器内部の素子がナノレベルを超えて微小化され、分子・原子レベルで、もはや電子の量子トンネル効果を無視できなくなってきた。また、混合原子価状態をもつ水素結合型PCET錯体は、外圏的な金属イオン間の電子移動と水素結合したプロトンの移動がカップルした、新しいタイプの機能性材料を作ることができる。混合原子価状態をもつ金属錯体として、可逆な多段階の酸化還元電位をもつRe錯体(ReII〓ReIII〓ReIV)を採用し、そのReIIIとReIV価の混合原子価錯体をHbim-配位子で水素結合させたダイマー錯体を設計し、[ReIIIC12(PPr3)2(Hbim)][ReIVC12(PPr3)2(bim)](3)を合成した。この錯体は1つのNH…N型のイミダゾール型の水素結合でRe(III)Re(IV)の混合原子価錯体が連結しており、結晶中で外圏的な混合原子価の電子移動と水素結合のプロトン移動が連動した初めての錯体となる。X線結晶構造解析により、水素結合型のプロトンが1つにブロード化しており、低温にするとダブルポテンシャルが現れる。また、結晶中ではRe(III)とRe(IV)錯体の区別は付けられず、電子移動とプロトン移動で揺らいでいるものと考えられた。30Teまでの高磁場では典型的なS=1/2のは強磁性を示しており、低温でのESR測定では17K~20Kで6本から12本への分裂が観測された。一方、誘電率の測定では4Kでも誘電率ε=2000~5000を示し、極低温でも常誘電相(強誘電相)をとっているものと考えられ、量子的な効果によりプロトンが低温まで揺動している可能性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請の時に比較して、プロトン移動と電子移動が連動している結果をX線構造解析の温度変化、および誘導体の合成で確認することができた。また、共同研究によって混合原子価間の磁気的な相互作用やESRなどによる電子的なカップルについての特性を得ることに成功した。しかし、誘電率のデータがまちまちであり、サンプル依存性を示すことが考えら得る。さらに、中性子線による研究がメインとなるはずであったが、震災によって中性子の測定を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行する上での問題点は、やはり中性子線による構造解析データの測定ができなかったことにより問題点が大きい。中性子による測定で、プロトン移動については証明することができる、。また、4Kの極低温での中性子線結晶構造解析を行うことができるため、17K~20Kの転移挙動がどのようなものなのか決着を付けることができるであろう。さらに、デバイスを利用した1分子での誘電物性測定を行うことができれば、分子デバイスとしての可能性が広がったはずである。
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