配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2011年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2010年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
研究概要 |
本研究では「地殻流体」の化学的側面を補強するため,マントルウェッジ由来の捕獲岩に見られる流体包有物の化学分析を行った. マントルウェッジを通過するリサイクル流体の存在は,電磁気観測や地震波トモグラフィー,ダイナミクス計算,高温高圧実験など間接的なアプローチによって活発に議論されているが,その起源を厳密に決めるには化学的情報との組み合わせが重要である.そこで本研究では,極東ロシアや島根県で採取したマントル捕獲岩中の二酸化炭素包有物の炭素同位体比の測定を行った. マントル捕獲岩中の二酸化炭素包有物は非常に小さな流体として存在しており,また,一つの鉱物内に異なる形成時期を持つ包有物列が見られる場合もあり,その炭素同位体比の分析と解釈には注意が必要である.本研究では顕微ラマン分光分析装置によって包有物一つひとつの炭素同位体比分析に挑んだ.しかし,分光法による炭素同位体比の分析精度は地球科学的な議論に耐えられるレベルではなかった.そこで,本研究では予定通り,流体包有物を還元環境で焼き鈍し,流体包有物の主成分である二酸化炭素をグラファイト化させる手法の開発も行った.様々な条件を試した結果,グラファイトの生成に成功した.この開発の先には二次イオン質量分析装置による高精度局所炭素同位体分析への道が開けている. 炭素は単体で「地殻流体」を構成しているわけではない.マントルウェッジの炭素循環系の解明は,付随して動く様々な元素の循環モデルを解く手がかりになるであろう.
|