配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2011年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2010年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
研究概要 |
地震時の断層滑り挙動における流体の役割は重要である,例えば断層滑りに伴う摩擦発熱によって岩石中の間隙水が温められ,間隙水圧が上昇することで,断層の弱化が生じる(thermal pressurization,以下TP).また,温められた間隙水(高温流体)が発生すると,断層にて岩石と流体が反応し,様々な元素組成・同位体値異常が発生する可能性がある.実際に,1999年台湾集集地震で活動したチェルンプ断層では,fluid-mobile elementとして知られているLi,Rb,Cs,Srなどの濃度異常とSr同位体比の異常が報告されている.しかし,このような異常が地震時の断層滑りによって生じうるかどうかの実験的な検証が必要である.そこで本研究では,高速摩擦試験機を使用,地震性滑り時の高温流体の発生を実験的に再現し,かつ実験前後の試料の微量元素・同位体分析を実施した.高速摩擦試験機は高知コア研究所に所有されている透水制御型回転式剪断摩擦試験機を使用し,実験試料には台湾チェルンプ断層の母岩である泥岩を用いた.実験の結果,変位量増加に伴う剪断強度の弱化が認められ,発熱温度が最高300度以上にまで達したデータを得ることができた.また閉鎖系の場合,温度上昇とともに,間隙水圧の上昇と有効垂直応力の低下が認められた.これら変化はTPを実験的に再現したことを意味する.さらに,実験前後試料の微量元素分析の結果,実験後試料にはLiの濃度の有意な低下が認められた.Liは常住のようにfluid-mobile elementであり,300度以上の高温環境における流体と岩石との反応によって岩石から流体側に移動する.以上の結果は,地震性滑り時の高温流体の発生を示す直接的な証拠として,微量元素・同位体異常が有効であることを実験的に検証できたことを意味する.
|