研究領域 | 動植物に共通するアロ認証機構の解明 |
研究課題/領域番号 |
22112505
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (40250104)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
2011年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2010年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 同型配偶子 / 接合突起 / 配偶子融合 / 配偶子接着 / 片親遺伝 |
研究概要 |
ゴニウム(Gonium pectorale)のBACライブラリを用いた交配型プラスの性染色体領域の解読から、クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)でしか知られていなかった配偶子接着タンパクの遺伝子FUS1のホモログGpFUS1を発見した。GpFUS1はクラミドモナスと同様にプラス交配型のゲノムだけに存在する性特異的遺伝子であり、配偶子誘導で発現が上昇した。また、昨年度開発した方法(Mogi et al.2012, J.Phycol.in press)を用いて、ゴニウムのプラスとマイナスの交配型を単独で性誘導し、両交配型で細胞壁を離脱した接合突起を発達させた配偶子を誘導し、免疫染色の結果、ゴニウムのプラス交配型の接合突起の先端にGpFUS1の局在が検出された。一方、ゴニウムの両交配型の全ゲノム解読の結果、配偶子融合タンパクの遺伝子GCS1のホモログGpGCS1を発見した。GpGCS1はクラミドモナスと同様にプラスとマイナスの両交配型のゲノムに存在する性特異的遺伝子であり、配偶子誘導でマイナス交配型だけで発現が上昇した。同型配偶のマイナス型はオスと相同であると考えられているので(Nozaki et al.Curr.Biol)、GCS1遺伝子の普遍的な片側の性(オス、マイナス交配型)の発現特性が再確認された。 また、原核生物が真核生物に共生することも細胞間の認証と合体である。本年度我々は、1970年以来未解明であった緑藻類ボルボックス目の細胞内に共生するバクテリアの分子同定に成功し、世界で初めて植物細胞内に感染するリケッチア科のバクテリア"MIDORIKO"を発見した。"MIDORIKO"は植物細胞に感染し、宿主に危害を与えることなく増殖していた。リケッチア科はミトコンドリアの祖先に近縁と考えられており、宿主の植物細胞とそんなに悪くない「まずまずの関係」で生育する"MIDORIKO"の発見は、今後の医学及びミトコンドリアの初期進化過程の研究に大いに役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゴニウムのプラスとマイナスの交配型を単独で性誘導し、両交配型で細胞壁を離脱した接合突起を発達させた配偶子を誘導することに成功し(Mogi et al.2012, J.Phycol.in press)、プラス交配型の接合突起の先端に配偶子接着タンパクのホモログGpFUS1の局在が検出され、配偶子融合タンパクGCS1のホモログ遺伝子をゴニウムから得ることに成功した。即ち、配偶子接着と融合に関する遺伝子を得る事ができ、これらの遺伝子の一般性が確認でき、相互作用因子の探索への基盤を作ったので。
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今後の研究の推進方策 |
今後、両交配型の配偶子が接合突起をもつゴニウムを用いて接合突起の単離をプラスとマイナスの両交配型で実施し、単離した接合突起を用いてタンパク質プロファイルの比較をプラスとマイナスの交配型で実施する。次に、プラスとマイナスで異なるプロファイルのタンパク質をプロテインシーケンス・TOFMS解析で同定する。その結果、これまでにクラミドモナスで不明であったFUS1とGCS1の相互作用因子とその遺伝子を特定する。次に、様々な分子遺伝学的方法が可能であるクラミドモナスを用いて、これらの遺伝子のオーソログに関する分子遺伝学的解析を実施する。その結果、アロ認証で基本的かつ重要と考えられる配偶子の「接着」から「融合」に至る分子メカニズムを明らかにする。
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