公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
オオムギ野生種(Hordeum bulbosum)は、独立二遺伝子座(SおよびZ)支配の自家不和合性を有している。本研究では、このアロ認識機構の特異性決定因子の一つ、雌ずい側S遺伝子の有力候補HPS10(Hordeum Pistil S-specific 10)の機能証明を目的として、組換えHPS10タンパク質を用いた花粉培養によるin vitroバイオアッセイを行い、HPS10のSハプロタイプ特異的な花粉阻害効果を調査した。本年度は新たに、培地中に雌ずいを浸漬してS、Z因子を滲出させた後、花粉培養を行うことで、in vitroで自家不和合性を再現する実験系を確立した。この雌ずい浸漬培地を用いることでZ因子を補い、さらに組換えHPS10タンパク質(S_3-HPS10-GST融合タンパク質)を花粉発芽培地に添加したところ、S_3ハプロタイプ特異的な花粉発芽阻害効果が認められた。このことから、HPS10が雌ずい側S決定因子として機能することが強く示唆された。さらに、HPS10遺伝子の機能証明アプローチとして、VIGS (Virus-induced gene silencing)法による一過的な発現抑制系についても検討し、オオムギ野生種の開花前後の穎花においてウイルスの感染とVIGSベクター由来の遺伝子発現を確認することができた。また、本年度は新たな花粉側S因子候補の探索を目的として、成熟花粉のプロテオーム解析の予備検討を行った。現段階では、プロテオーム解析に必要なオオムギ野生種の発現配列(EST)情報が既存のデータベースにはほとんどない。このため、S_1およびS_3ハプロタイプの成熟花粉のTotal RNAからcDNAライブラリーの作成を行い、高速シークエンサーを用いたESTデータベース獲得のための基盤整備を行った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Breeding Science
巻: 61 ページ: 35-42
Jpn.Agr.Res.Qtr.(JARQ)
巻: 44 ページ: 127-131