公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
天然変性タンパク質とは、決まった構造をとらない「フラフラした」領域をもつタンパク質の事である。これらの部位の結晶構造を決めることは困難であり、またそのような領域は結晶化を妨げるため、結晶化の際にあらかじめ除かれている場合が多い。これまで、そのような領域は構造を持たないので重要な機能はないだろうと無視されてきた。しかし、近年複数のタンパク質と相互作用するタンパク質が、この「天然変性領域」で他のタンパク質と結合していたり、また結合する相手に応じて構造を変化させて相手がいるときには決まった構造をとることが示されたことから天然変性領域への関心が高まっている。天然変性タンパク質は高等生物のタンパク質には多く見られるが、細菌などの原核生物のタンパク質にはほとんどないことがコンピューターを用いた解析から明らかにされている。私は、細菌である大腸菌のタンパク質の中に天然変性領域と判断される部位をもつ酵素の研究をしている。遺伝子の組換えを開始するその酵素は、DNAの分解酵素であるが、DNA上に自己ゲノムの目印である特定の塩基配列を見つけると、組換え酵素へとその機能を変える。私は、この酵素活性の変化に「天然変性部位」が重要であるという仮説を立て、それを証明する実験を行った。その結果、この領域に対するアミノ酸置換は活性の変化をもたらさないが、アミノ酸長の変化は活性の変化に影響することを明らかにした。さらに今年は、超高速原子間力顕微鏡を開発した金沢大学の安藤敏夫先生の研究グループを開始し、超高速原子間力顕微鏡を用いて、1分子のこの酵素がDNAを分解してゲノム自己標識配列を認識する様子を観察する実験のセットアップを行ってきた。これまでの成果を活かして、DNA上のその配列認識前後での酵素分子の形態変化を、野生型及び、先述の天然変性領域突然変異酵素を用いて今後解析していく予定である。
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Proc Natl Acad Sci USA
巻: 108 ページ: 1501-1506
Nucleic Acids Res
巻: (印刷中)(掲載確定)