配分額 *注記 |
11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
2011年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2010年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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研究概要 |
本研究では,自分に向かって歩いてくる他者の知覚について,その視覚情報処理の機能と仕組みを解明し,人とロボットがお互いに歩き回るようなダイナミックな場面で潜在的で自動的なコミュニケーションを成立させる要因を特定し,人とロボットが自然に共生できるシステムの提案を行う。特に,潜在的コミュニケーションに深く関与する「顔」や「しぐさ」の情報を操作し,歩行者(人やロボットなど)の方向知覚に及ぼす影響を心理物理学的手法によって研究する。 本年度も昨年に引き続き,歩行者刺激をコンピュータでリアルタイムに制御して広視野スクリーンあるいはCRTディスプレイに提示し,観察者の行動反応を心理物理学的手法で測定した。昨年度,多数の歩行者のうち自分に歩いている者あるいは外れていく者を検索する課題を被験者に課し,歩行方向の差にとって,向かってくる歩行者が見つけやすい社会的知覚モードと,外れていく歩行者を見つけやすい一般物体知覚モードの2つがある可能性を発見した。これについて種々のロボット刺激および光点刺激(バイオロジカルモーション),そしてそれらの倒立刺激を用いてさらなる検討を行った結果,ヒトの外観に近い刺激やヒト性に関与する特性が強いほど,社会的知覚モードが見られやすいことを報告した。一方,ヒト刺激の表情および音声に情動を含めた刺激では有意な差は得られず,情報付与の方法の再検討を行っている。さらに,自己の移動イメージを脳波からデコーディングする実験を行い,多チャンネル計測を用いれば単一試行脳波からでもある程度の推定が可能なこと,その際スパースコーディングの適用が効果的であることを示した。 これらの研究成果から,自然に行き交えるロボットの設計指針として,ある程度ヒトらしい外見(特に四肢があること)をしていること,およびその動作パタンがヒトらしいことが正確な歩行方向知覚に必要であり,顔の向きは効果の強い知覚への伝達情報であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究項目(歩行方向知覚精度の計測,身体性意図の効果の検討,身体性情動の効果の検討,社会的要因の検討)については,全て実験を行い,ヒト刺激とロボット刺激について研究成果を上げた。最終目標としていた自然に行き交えるロボットの設計指針についても,一部は定性的ではあるが提案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
より広い範囲のロボットおよび生物について同様の解析を行い,知見の一般性を高める。そして,それによってより幅広く一般性の高いロボットの設計指針と,実世界に存在するさまざまなロボットに自然に行き交える機能を付与することが可能となる。また,CGではなく,実世界で歩行するロボットについても実証実験を行い,知見の妥当性を高める。
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