配分額 *注記 |
12,480千円 (直接経費: 9,600千円、間接経費: 2,880千円)
2011年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2010年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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研究概要 |
認知科学では神経回路網の詳細を簡略化した巨視的なモデルが主に利用される.しかし,細胞や分子の微視的モデルと巨視的モデルの中間に位置するメゾスコピックなモデルに対して,上下の階層を神経細胞の特徴と回路網の構造を加味して連結しようとする試みは未だ少ない.従来からメゾスコピックな振動現象を扱う標準モデルとして,周期振動の位相縮約表現である位相方程式の結合子系が用いられてきた.しかし,海馬や大脳皮質などの一部の脳部位を除いては,位相方程式に細胞の詳細な特徴を加味して,マクロなモデルとして組み上げた研究は少ない.そこで,本研究課題では,このようなモデルの基礎となる位相方程式の位相反応曲線とよばれる特徴を脳の各部位で実験的に詳細に調べた.生後2週間前後のラット脳切片を用いて中脳黒質と腹側被蓋野のドーパミン(DA)細胞の位相応答曲線を推定した.その結果,位相進み・遅れのある2相性の曲線が得られた.また,hyperpolarization activated cyclic nucleotide-gated(HCN)チェネルを阻害すると,位相進みのみを有する1相性の曲線が得られた.次に,DA細胞のコンダクタンスベースモデルを用いて位相応答曲線を数値的に計算した.この結果は実験によって実際に計測して得られた曲線と定性的に類似していた.また,電気シナプスで結ばれた結合系の膜応答合成関数を数値計算した.その結果から,HCNチャネルのコンダクタンスの増大と伴に,位相同期は安定化することが判明した.この結果は,HCNチャネルが発達に伴う同期的活動変化に重要な役割を果たしていることを示唆している.
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