研究領域 | 出ユーラシアの統合的人類史学:文明創出メカニズムの解明 |
研究課題/領域番号 |
22H04456
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
人文・社会系
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
塚本 憲一郎 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究センター, 客員研究員 (20755368)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 古代マヤ文明 / 戦争 / 祭祀儀礼 / エル・パルマール遺跡 / 王宮 / 図像 / 王政 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、古代マヤ社会の異なった空間における戦争に関する儀礼を比較して、暴力が身体化・物質化する社会プロセスを解明することを目的とする。古代社会の戦争に関する研究は、戦争の有無、戦術や武具、戦争技術面、政治体制の崩壊などを、中央集権化や社会階層化などといった社会変化と結びつけて研究されてきた。これらの先行研究は社会変化のプロセスを解明する上で重要な成果を挙げた一方で、戦争が生活の一部として浸透し、文化概念として身体化・物質化する過程で形成される社会関係についてはあまり検討されていない。本研究は、メキシコのカンペチェ州のエル・パルマール遺跡の王宮を発掘・修復して暴力の身体化と物質化を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、メキシコ カンペチェ州南東部に位置するエル・パルマール遺跡の調査によって、古代マヤ社会の戦争という暴力が祭祀儀式を通じて身体化・物質化するプロセスを解明することを目的とする。2022年度は、5月から9月に遺跡中心部にある王宮と付随する広場Gを調査し、その成果をアメリカ考古学学会をはじめとする国内外の学会・講演会で発表した。王宮調査は学際的な国際チームによって、平面的・層位的発掘、遺物の分析、炭化した古植物の同定、床面に付着した有機物の化学分析を実施した。 王宮は一キロ平米を超える広大な複合建造物によって構成されているために、2022年度はその南部分を調査した。南部分には遺跡において三番目に大きな、高さ20メートルに及ぶ建造物S21-1がそびえ立つ。この建造物を平面的・層位的に発掘した結果、古典期中期(後391~548年)から古典期終末期(後800~900年)にかけて何度も増改築が重ねられたが、一貫して王の祭祀儀礼の際に、劇場的世界を生み出す舞台装置の役割を果たしていたことが明らかになった。最も古い古典期中期(後391~548年)の建物は、高さが約半分しかなったが、フリーズ(建物の壁にめぐらされた水平帯の幅広い中間部)部分には、その後の建造物には見られない巨大な仮面の彫刻群が施されていた。古典期終末期(後800~900年)に、王宮が放棄される際には終結儀礼が行われ、床面から灰と一緒に大量の遺物が出土した。遺物には儀式用の多彩式壺や椀、翡翠や貝で作られた首飾りが含まれていたために、これらが王族の所有物であった蓋然性が高い。出土品には、儀礼の際に自らの耳や下に穴を穿つ自己犠牲用骨針が複数含まれていた。その一つには王の権威を象徴化するゴザの文様が刻まれていた。二体の人骨も出土した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際チームの予定が噛み合い、現地での調査期間中にフランス、アメリカ、メキシコの各国から研究協力者が同時に集結できたために、方法論の改善などを現場で調査を実施しながら並行して議論を進めることができ、当初予定していた以上の発掘と修復作業を進めることができ、王族の祭祀儀礼と暴力の関係を示す期待以上の遺物が出土したため。
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今後の研究の推進方策 |
予想以上に大量の遺物や人骨・動物骨が出土したために、来年度は各国の研究協力者と密に連絡を取りつつ、発掘よりもこれらの分析を集中的に実施する予定である。出土した人骨が儀礼用の生贄であったかどうかも、来年度の分析によって明らかにする。
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