公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
物質の状態が気体、液体、固体と変化するように、磁性体の中の電子スピンの状態も、温度変化や磁場印加によって様々に変化する。量子磁性体に強い磁場を与えると、スピンネマティックとよばれる電子スピンの量子液晶状態が現れると理論的に予測されている。本研究では、候補物質の磁化と磁場により引き起こされる歪みを精密に測定することによって、スピンネマティックに特有な磁気応答を検出することを目指す。
本申請では電子スピンの量子液晶状態であるスピンネマティックを研究対象とし、候補物質の単結晶試料の合成、パルス強磁場中の磁化測定、および、磁歪測定を組み合わせてその特徴を捉えることを目的とした。30テスラ近傍の磁場領域でスピンネマティック状態を示す候補物質である二次元磁性体ボルボサイトCu3V2O7(OH)2・2H2Oの単結晶の育成に取り組んだ。磁化の異方性、磁歪の結晶軸方向依存性の測定に適した大型の単結晶を得ることに成功した。パルス強磁場中での磁化測定の結果、磁性層に垂直な方向に磁場を印加した場合、磁化プラトーを示す30テスラの直前の磁場領域で、磁化が非線形な振る舞いを示すことを観測した。さらに、さまざまな形状の単結晶を用いて磁歪の測定を行い、磁化と磁歪の対応関係を明らかにした。一般的な磁性体では磁歪は磁化に対して、ある冪に従って変化することが報告されているが、30テスラ近傍では低磁場の冪の振る舞いから外れる変化を観測した。これは、強磁場中で低磁場とは異なるスピン相関が発達しているためであると考えられ、直接的な観測が困難であるスピンネマティック状態の解明にとって重要な実験結果が得られたといえる。さらに、ハニカム格子に関連した特異な幾何学格子を持つ有機無機ハイブリッド磁性体の単結晶を育成し、パルス強磁場を用いて磁化飽和にいたる磁場領域までの磁性を調べた。特に、三次元ハニカム格子を有する物質においては、常磁性状態と磁気秩序状態の中間の温度領域に存在する新たな磁気相を発見した。この相は、スピン相関が発達しているが長距離秩序が存在しないという点でスピンネマティック状態との類似性がみられ、今後の研究に資する新物質を提示することができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
Physical Review Letters
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