研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04469
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤城 裕 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20739437)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スキルミオン / ホモトピー論 / 磁性体 / 物性理論 / ダイナミクス / スピン液晶 / スピンネマティック相 / 磁気四重極子 / トポロジカル相 / 冷却原子系 |
研究開始時の研究の概要 |
連続的対称性の破れた相の性質は、南部-Goldstoneモードとトポロジカル励起により支配されます。磁気スキルミオンに代表されるトポロジカル励起は、秩序変数の空間的変化が、連続変形により一様なものに変形できない励起であり、非摂動的効果により現れます。本研究では、量子液晶の代表格である量子スピン液晶における新規スキルミオンの開拓とその創発物性の解明を行います。特に、量子スピン液晶スキルミオン格子や量子スピン液晶分数スキルミオンの開拓を中心に行い、その非自明な構造に由来した特異な物性を明らかにします。
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研究実績の概要 |
2009年に磁気スキルミオンが磁性体中で観測されたことを契機として、実験と理論の両面から、磁気スキルミオンの研究が精力的に行われている。近年では、従来の磁気スキルミオンにはない特性をもつトポロジカルソリトンの探索が盛んに行われ、反強磁性体やフェリ磁性体などの様々な磁性体中のスキルミオンも議論されている。ただし、これまで安定なスキルミオン結晶が見出されていたのは、秩序変数空間がS^2=CP^1である古典スピン系あるいはスピン1/2の系に限られていた。 そうした中我々は、秩序変数空間が複素射影空間CP^2である、一般化Dzyaloshinskii-Moriya相互作用を含んだスピン1の強磁性体の模型において、低磁場領域と高磁場領域で異なる種類のスキルミオン結晶が系の基底状態として現れることを見出した。具体的には、高磁場領域では単位トポロジカルチャージをもつスキルミオンの三角格子が、低磁場領域ではトポロジカルチャージ1/2をもつスキルミオンから成るハニカム格子が系の基底状態であることがわかった。どちらの相も磁気四重極子を伴うスピン液晶の性質も有しているため、前者の相はスピン液晶スキルミオン結晶、後者の相はスピン液晶分数スキルミオン結晶(スピン液晶メロン結晶)と言える相である(系の秩序変数空間がCP^2であることから、CP^2スキルミオン/メロン結晶とも呼べる)。また、これらの配位は従来の磁気スキルミオンと同様に磁気双極子の構造因子にtriple-q構造を持つことに加え、スピン液晶スキルミオン結晶特有の性質として、磁気四重極子の構造因子においてもtriple-q構造を持つことを数値的に見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、当初の計画にあったスピン液晶スキルミオン結晶だけでなく、当初の計画にはなかった、スピン液晶分数スキルミオンが整列したスピン液晶分数スキルミオン結晶(スピン液晶メロン結晶)も、スピン1の量子磁性体の模型で現れることを明らかにしたため。更にこの磁性体模型は、SU(3)スピン軌道相互作用を導入したスピン1のBose Hubbard模型の強相関極限から導出可能であり、冷却原子系でも実現可能であることを明らかにしたため。また、これらの成果に関して、学術論文にて発表するだけでなく、国内外の学会や会議等で成果発表を行い、そこでの様々な研究者との積極的な議論を通じて、今後の新たな進展への指針にもつながっているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の順調な研究の進捗状況をふまえて、予定通り2023年度の研究計画を遂行する。また、今年度研究計画に無かった量子液晶に関連する成果を挙げることが出来たため、それらの問題についても深化・発展を図る。
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