研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04472
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川崎 猛史 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10760978)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | キラリティ / 分子動力学法 / スキルミオン / 異方性 / 液晶秩序 / キラリティー / トポロジカル相転移 |
研究開始時の研究の概要 |
らせんや渦など,鏡像と重ならない複数の相を示す材料を「トポロジカル材料」と呼ぶ.このようなトポロジカル材料に関する研究は電子系や磁性体など量子的な系において進んでいるが,分子結晶などの古典的な系は未開拓である.本研究の目的は,量子系で多く観測されている上述のトポロジカル相が分子結晶などの古典系においても広く生じうることを示し,その中で量子系と古典系の間に存在する普遍的・多様的機構を解明することである.
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研究実績の概要 |
前期公募研究において,申請者らは,比較的アスペクト比の小さな異方粒子系にキラル相互作用を考慮した分子シミュレーションモデルを構築した.その中で,比較的小規模な渦(半スキルミオン構造)や螺旋(ヘリカル構造)からなる,熱平衡系において安定なトポロジカル相が得られることを示し,その力学応答と相変化が有意に結合することを明らかにした. 本年度は,Gay Berneポテンシャルによる,アスペクト比1 : 3程度の比較的細長い異方粒子に,キラル相互作用を考慮することで,巨大な半スキルミオン構造を得ることに成功し,粒子密度によっては,半スキルミオン構造が多様なモルフォロジーを形成することを明らかにした. 一方,これまで熱平衡系において構築したキラル相互作用を有する粒子モデルは,近年盛んに研究されているアクティブマター分野においても極めて重要である.実際,バクテリアやウイルスなどの生物個体の多くは,立体斥力に関するキラリティを有する.このようなキラルな生物集団系では実験的にも渦形成が報告されているが,これを理論的モデル化したものは限定的である.これに対して,本研究では,このような生物個体を想定したモデル計算(運動方程式に自己駆動力を考慮したもの)に今回開発したキラル相互作用を乗せることで計算を進めた.その結果,熱平衡系と同様に半スキルミオン渦をはじめとするトポロジカル相を形成することを確認し,渦が自発的に回転運動することを発見した.さらに興味深いことに渦の回転方向は,渦ごとに多様であることと,自己駆動力の大きさによって運動性が一次転移的に変化することを発見した.今後は,このような現象を詳しく詰めていきたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな相互作用をもつ熱平衡粒子系モデルを非平衡アクティブマターモデル拡張することに成功し,渦の形成とそれらの自発運動に関する興味深い結果を得ている.当初計画では,熱平衡状態を維持しながら薄膜拘束条件を変化させ,バルクでの振る舞い:とりわけコレステリックブルー相の観測を目指したものであった.これに対して本年度は,薄膜拘束系の平衡系において巨大渦が観測できた段階で,これをアクティブマター系への拡張に舵を切ることにより,渦の自発運動など重要な結果を順調に取得している.したがって,当初予定の同等程度の進捗は得ているものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,上記アクティブマター研究をさらに発展させる.主に多様なトポロジカル構造を有する系に対して粒子の自己駆動力を制御した際の,動的振る舞いについて詳しく調べる.とりわけ,粒子密度,自己駆動力,粒子間に働くキラリティを変化させた際の相図(状態図)を作成させ,キラル・アクティブマターに関する新たな学理を構築する.
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