公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
少数キャリア希土類化合物 CeSbで発現する量子液晶の電子描像を確立させ,「悪魔の階段」で知られる複雑怪奇な磁気転移へ導く機能性を明らかにする。鉄系超伝導体を代表例として, これまで量子液晶の科学は遷移金属化合物を中心に研究が行われてきたが, 本研究で希土類化合物の量子液晶の特異性を極め, 遷移金属化合物との違いを明示していくことで, 希土類化合物特有の量子液晶とその機能物性を研究する新たな舞台の創造を目指す。
希土類化合物 CeSb が示す「悪魔の階段」と呼ばれる相転移現象の機構に注目した研究を行った。この相転移の特徴として,長周期の反強磁性秩序が微小な温度変化で逐次的に変化するだけでなく,Ce 4f 結晶場軌道が立方晶から正方晶へ変化する異方的な軌道秩序を示す。この機構解明へアプローチする本研究独自の手法として,CeSb の系統物質である CeAs/CeBi の比較を行う観点で研究を進めてきた。CeX (X: P, As, Sb, Bi) は全て低温で反強磁性秩序を示すが, なぜか周期表のプニクトゲンで中途半端な位置にある Sb を含む CeSbだけで「悪魔の階段」が発現する 。さらに, CeSb/CeBi の結晶場は TN 以下で正方晶を示す一方で, CeP/CeAsは立方晶のまま反強磁性へ転移するため, CeAs/CeSb では異なる対称性が拮抗する境界近傍にあり「悪魔の階段」を導く機構の鍵となると言える。本研究では,角度分解光電子分光,レーザーラマン分光,非弾性X線散乱分光を行い, CeAs/CeSb/CeBiを多自由度の視点(遍歴電子,4f 結晶場軌道,フォノン)から精密に調べた。その結果,最も顕著な違いが電子・フォノン結合にあることを発見した。CeAsだけで観測されたフォノン分散の温度変化は,CeAs で電子・フォノン結合が低温で発達することを示しており,CeAsは CeSb/CeBi に比べてキャリア数が少なく遮蔽効果が弱くなる結果として,伝導電子・フォノンの結合が低温で発達していると説明できる。したがって, CeAs/CeSb/CeBiの背後にある電子相関機構の違いにはキャリア数が重要な要素になっていることが,これら系統的実験で明らかとなった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 14 号: 1 ページ: 127-127
10.1038/s41598-023-47719-z
Phys. Rev. Lett.
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Physical Review Letters
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10.1103/physrevlett.130.186402
Review of Scientific Instruments
巻: 94 号: 8
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https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/76783
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/81141
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=19733