研究領域 | 量子液晶の物性科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04485
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
寺嶋 太一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, グループリーダー (40343834)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 鉄系超伝導体 / 電子ネマチック相 / 層間電気抵抗 / 磁場 / 低温 / 強磁場 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、鉄系超伝導体ネマチック相の電子状態の面内異方性を、磁場中での層間電気抵抗測定により明らかにする。具体的には、鉄系超伝導体の面内に磁場を入れ、層間電気抵抗を面内磁場方位の関数として測定する。バンド計算に基づく理論計算の助けを借り、測定結果から電子状態/フェルミ面の面内異方性を導き出す。 測定対象は、CaFeAsFとCo置換体、 FeSeとS置換体などである。置換体では、置換量に応じてネマチック転移が抑制される。さまざまな温度、磁場における測定を行い、鉄系超伝導体ネマチック相において、どのような電子状態の異方性が現れ、ネマチック転移の抑制によりどのように変化するのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、鉄系超伝導体ネマチック相の電子状態の面内異方性を、磁場中での層間電気抵抗測定により明らかにすることを目指している。具体的には、鉄系超伝導体の面内に磁場を入れ、層間電気抵抗を面内磁場方位の関数として測定し、結果をバンド計算に基づく理論計算と比較することにより電子状態/フェルミ面の面内異方性を導き出すことを想定している。 なお、面内異方性を見るためには、ネマチック転移において面内方位の90°異なるドメインが混じるのを防ぎ、シングルドメインの試料を得るため、デツインが不可欠である。本研究では試料を適当な基板に固定し、試料と基板の熱収縮の違いを利用してデツインする。また、 厳密に面内に磁場を入れて、層間電気抵抗を面内磁場方位の関数として測定するには、試料を極角θと方位角φの2軸に回転することが不可欠であるが、磁場17テスラまで使用できる2軸回転機構を利用する。 本年度は、鉄系超伝導体母物質CaFeAsFの層間電気抵抗に生じる磁気抵抗の磁場方位依存性を詳細に調べ、下記の結果を得た。(1)最大14 Tの測定磁場範囲で、通常と異なり縦磁気抵抗(B // I // c)が横磁気抵抗(B ⊥ I // c)より大きい。(2)面内に近い磁場方位でコヒーレンスピークが観測される。(3)磁場が面内の場合、磁気抵抗はB // boの方がB // aoより大きく(ao, boは直方晶の結晶軸)、その異方性はT = 4 K、B = 14 Tで7倍に達する。これらの結果は、バンド計算に基づく伝導度の理論計算で定性的に再現されたが、面内磁場方位に関する異方性は計算で著しく過小評価され、電子ネマチック性の影響が通常の計算では十分に取り入れられていないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合計2年の公募研究の期間中に、鉄系超伝導体母物質CaFeAsF、鉄系超伝導体FeSeなどについて測定を行い、電子ネマチック相の電子状態の面内異方性についての知見を得ることを目指しているが、上述のようにCaFeAsFについて意味のある結果を得ることができたので概ね順調に推移していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
上述のCaFeAsFの測定と同様の手法を、鉄系超伝導体FeSeに適用し、その電子ネマチック相における電子状態の面内異方性を明らかにする。CaFeAsFではネマッチク秩序が反強磁性秩序と共存するが、FeSeでは反強磁性秩序は生じず、純粋な電子ネマチック状態が観測可能であり、両者の比較は重要である。
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