研究領域 | 変わりゆく気候系における中緯度大気海洋相互作用hotspot |
研究課題/領域番号 |
22H04486
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 気候 / 海洋 / 長周期変動 / 大気海洋相互作用 / 海洋熱波 |
研究開始時の研究の概要 |
2014-2015年に北米西岸で発生した海洋熱波は、北米西岸域の気象や海洋生態系に大きな影響を及ぼし、社会問題となった。海洋観測データの解析から、2014-2015年や2019年の北米西岸での海洋熱波に先行して、塩分・水温・力学高度偏差を伴う海洋大規模海洋擾乱が、北太平洋西部から中央部で出現・東進し、北米西岸での海洋熱波に発展した可能性がある。本研究では「東進する海洋大規模擾乱が北米西岸での海洋熱波の元となる」を作業仮説として、特に東進が顕著に観測される塩分に着目し、中緯度大気海洋相互作用を通じて生じる擾乱発生・伝搬・増幅過程を明らかにし、予測可能性を高めることを目的として研究を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度には下記の成果が得られ研究は順調に進んだ。2014-2015熱波に関わる、亜表層水の連行について、スーパーエルニーニョに伴う湧昇偏差となっていたにも拘らず、2011-2013年での負のPDOに伴い北太平洋中央部で蓄熱により発生した高温高塩分擾乱の東進に伴い、連行される海水温度が平年に比べて高かったことが、海洋熱波を持続させた一因であることを観測データから明らかにした。一方、より近年の2019-2020年での熱波は、2014/2015とは異なり、風による沈降偏差に伴い等密度面深度が深化して生じた、低塩分低密度高温偏差により混合層が浅くなり、海面熱フラックスの加熱偏差を通じて、夏季を中心として熱波が生じたことがわかった。高解像度大気海洋気候モデルMIROC6-subhiの300年出力データの解析を行い、2014-2015年の東部北太平洋熱波と類似した気候モードの変動パターンが存在し繰り返している可能性を見出した。東部北太平洋アラスカ湾水温変動を代表するNPGOモードおよび熱帯と関係の深いPDOモードが熱波の数年前に負から正に転じ極大に向かう際に、中央太平洋エルニーニョの発生と同期してアラスカ湾水温の熱波が発生する、というパターンである。この変動パターンについて1920年に遡り、温暖化トレンドを除いた観測された海面水温データを用い調べたところ、年平均偏差が標準偏差の1.5倍を超える熱波年のうち、モデルでの熱波パターンおよび2014/15に類似した熱波が1936,57, 2005に生じていたこと、2019/2020の夏季に強まる熱波に類似した熱波が1944年に生じていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測およびモデルデータの解析から、東部北太平洋中緯度のアラスカ湾に発生する海洋熱波については、負のPDOに伴い北太平洋中央部で蓄熱により発生した高温高塩分擾乱が亜表層を東進し、エルニーニョに伴う正の風応力カール偏差による湧昇によって高温偏差が出現する2014/15のパターンと、風による沈降偏差に伴う等密度面深化によって生じた、高温低塩分低密度偏差に伴う混合層の浅化が、海面熱フラックス加熱偏差によって夏季を中心とした熱波を発生させる2019-2020年のパターンがあり、これらが繰り返し出現し、特に近年の温暖化で熱波が顕在化していることが明らかとなった。これらは、本公募課題で目指していたことであり、研究は順調に進んでいる、と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた成果をブラッシュアップして論文として出版するとともに、海洋熱波の長期変動に関わる北太平洋10年規模変動PDOの長期変動に関わる18.6年周期潮汐変動の関わりについて研究を行い、海洋熱波・気候変動の予測可能性を高める。観測およびモデルデータの解析から、東部北太平洋中緯度のアラスカ湾に発生する海洋熱波については、負のPDOに伴い北太平洋中央部で蓄熱により発生した高温高塩分擾乱が亜表層を東進し、エルニーニョに伴う正の風応力カール偏差による湧昇によって高温偏差が出現する2014/15のパターンと、風による沈降偏差に伴う等密度面深化によって生じた、高温低塩分低密度偏差に伴う混合層の浅化が、海面熱フラックス加熱偏差によって夏季を中心とした熱波を発生させる2019-2020年のパターンがあり、これらが繰り返し出現し、特に近年の温暖化で熱波が顕在化していることが明らかとなった。熱波に関わる気候モードとして、気象庁で発表しているNPGOデータとPDO の年平均偏差時系列には有意な正の相関が存在し、類似の長期変動を示していた。観測されたSST時系列の20N以北北太平洋での海面水温年平均偏差の第2主成分はより長期の変動を示しており、アラスカ湾熱波が発生しやすい期間(1930-1960年代、2010年代)と、逆に寒波が発生しやすい期間(1970年代―2000年代)を特徴付け、モデルのパターンと整合しない、夏季に強まる1944年2019/20熱波および1976年寒波は、これらの長期変動に伴い生じていた。来年度はこれら気候モードと熱波と寒波の関係を繰り返し生じさせる要因の一つであり、18.6年周期の3倍と2/3倍振動の3つの周期で構成されるPDO変動について、研究を進める。
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