研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04497
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 俊介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60452273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 電気化学触媒 / 欠陥 / 空間 / 金属空気電池 / 酸素発生反応 / 欠損 / 酸素還元反応 / 多元素 / 酸素欠損 / 構造内空間 / 構造内欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、構造内に欠陥や空間を有する物質を用いて、欠陥量や空間サイズと電気化学反応に対する触媒活性の本質的な関係を明らかにし、高活性な電気化学触媒の創成を試みる。また、電気化学操作による、構造内欠陥・空間へのイオンの挿入、またはそれらからのイオンの脱離の可能性の検討を行う。さらに、開発した電気化学触媒もしくは活物質を、金属空気電池などのエネルギー変換デバイスへと応用する。
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研究実績の概要 |
酸素の電気化学反応は水の電気分解、電解採取プロセスのアノード反応、金属空気電池などに関わる重要な反応である。研究代表者らはこれまでに、酸素の電気化学反応を促進させるための電気化学触媒の研究開発に精力的に取り組み、構造内に欠陥や空間を有する物質群の一部が、酸素の電気化学反応に対して高い活性を有することを明らかにしている。本年度は特に、ペロブスカイト型酸化物を中心に、酸素欠損量が酸素発生反応に対して与える影響を調査した。その結果、酸素欠損が反応中心となり活性を向上させる効果と構造を不安定化させる効果の両方が存在するため、触媒の高活性と高安定性を両立させる適切な酸素欠損量が存在することが明らかとなった。さらに、カチオン欠損量と酸素発生反応・酸素還元反応に対する活性の関係を調査し、カチオン欠損により遷移金属と酸素の結合距離および結合強度が変化し、適切な結合距離に調整することで触媒活性を最大化できることを見出した。以上の成果に加え、複数の遷移金属イオンを含有するペロブスカイト型酸化物の酸素発生反応に対する活性は、それぞれの遷移金属イオンを単一に含有する酸化物の活性に比べて高くなる想定外の現象を発見した。上記はすべて、酸化物が安定に存在するアルカリ性水溶液中での結果であり、酸性水溶液中ではほとんどの酸化物触媒は溶解する問題点がある。これに対し、Ruを含有する四重ペロブスカイト型酸化物が、塩基性水溶液中のみならず、酸性~中性水溶液中においても安定かつ高活性を維持することや、その他構成イオンの種類や価数、遷移金属イオンと酸素の結合距離等により活性と安定性がそれぞれ変化することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酸素欠損が酸素発生反応に対する触媒活性に与える影響を調査する当初計画が順調に進展したため、その対象をカチオン欠損にまで広げて研究を進めることができ、さらに、複数種の遷移金属イオンを含有する酸化物が、それぞれの遷移金属イオンを単一に含有する酸化物に比べて、酸素発生反応に対して高い活性を示す想定外の現象を発見したため。また酸性~中性水溶液中でも高活性を維持するRu含有四重ペロブスカイト型酸化物の開発と、その活性と安定性の起源を調査する研究にも取り組むことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、複数種の遷移金属イオンを含有する酸化物が、それぞれの遷移金属イオンを単一に含有する酸化物に比べて、酸素発生反応に対して高い活性を示す現象を発見した。すなわち、単純混合則で予測される触媒活性よりも、著しく大きな触媒活性を示す特異的な現象である。次年度も引き続き、酸素欠損やカチオン欠損が触媒活性に与える影響を調査する予定であるが、以上の成果を受けて、さらにその対象を複数の遷移金属イオンを混合した系にまで拡張し、活性の最大化を試みる。また金属空気電池などのデバイス化を試み、デバイス全体としても活性と安定性の評価を行う予定である。
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