研究領域 | 機能コアの材料科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04507
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神戸 徹也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00733495)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | サブナノ粒子 / 精密合成 / クラスター / 精密元素配合 / デンドリマー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、物質をサブナノサイズに微小化することにより、機能コアとしての構造欠陥を持つサブナノ粒子を設計して合成する。その物性を多角的に解明し精密合金サブナノ粒子としての新たな材料を開拓する。 上記研究を行うにあたり、デンドリマーを鋳型とした機能コアのための精密なサブナノ粒子合成手法を開発する。特に非対称デンドリマーを用いることで1原子レベルでの金属の配合を行い機能化させる。得られるサブナノサイズの機能材料は既存材料における機能発現部位を選択的に抽出したものに相当するため、様々に提唱されている次世代材料が機能発現する要因に対して実験的に研究することで新材料を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究ではこれまでに開拓したサブナノ構造体の精密合成を用い、「機能コア」のモデル物質となる「サブナノ機能コア」を化学的に設計して合成することを目的としている。合成したサブナノ機能コアの触媒活性や磁気・発光特性を明らかにすることで、機能が発現する本質的な要因を構造との相関に着目した解明へと展開する。 これまでの研究において、樹状高分子を用いた精密元素配合手法を見出している。これを発展させることで、1原子レベルで元素配合出来る手法を開拓した。この手法により1原子の鉄が配合されたスズクラスターの合成を見出した。この1原子配合したクラスターは近赤外領域で発光する機能を有することが明らかとなった。また、精密元素配合手法を発展させることで、白金とガリウムとの集積順の入れ替えに成功し、様々な比率でのPt/Ga合金粒子の合成に成功した。得られたクラスターの構造を電子顕微鏡により観察することで、1原子の違いによりクラスターの構造が劇的に変化することを見出した。また、合成した合金サブナノ粒子の機能評価を系統的に行うための、高密度での担持安定化手法も開発した。 高密度での担持安定化手法の開発により、簡便なクラスターの機能測定を見出した。例えば、これまでの触媒担持サンプルでは担持量が少なく、電気化学的な基質酸化反応の活性は定量が困難であった。新たに開発した高密度担持手法を駆使することで、初めてサブナノ粒子のアルコール酸化触媒活性の評価が可能となった。また、白金とガリウムの合金クラスターの機能解明を、触媒反応に着目しても検討した。様々な比率で合成したPt/Ga合金のCO酸化触媒機能について調べた結果、特定の配合比において低温でCOの酸素酸化反応が進行することを見出した。 このように本研究で開発したサブナノ粒子の機能評価手法は、サブナノ機能コアの開拓に向けた重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において樹状高分子を用いた金属集積により金を構成元素とするサブナノ粒子の合成に成功した。これは熱力学的な安定性に基づいた従来の合成法とは異なり錯体前駆体において原子数を規定できるものであり、これまで合成が不可能であったサブナノ粒子の開拓につながる結果である。また、申請者が開拓した白金とガリウムとの全配合比率にわたる自在な精密配合手法を駆使することで白金とガリウムとのサブナノ粒子における精密配合も達成している。 合成した白金とガリウムとの合金サブナノ粒子の機能を電気化学触媒機能、ガス吸着反応およびガス触媒反応により明らかにした。COの酸化触媒の活性を調べることで、特定の配合比率において低温での反応進行が確認された。このような機能評価について達成している。また、異種金属を配合したサブナノ粒子の構造についての電子顕微鏡による観察も出来ており、元素の混和性についての情報も見出している。電子状態については光電子分光法による評価を既に行っており、金属配合による電荷の移動を確認している。これら実験結果により、機能と構造との相関についての知見が期待できる。 以上のことからおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、昨年度に引き続き機能を発現するサブナノ粒子の合成とその構造解明を行う。これまでの研究において、異種金属を配合できるデンドリマー鋳型手法に加え、デンドリマー鋳型と配位子保護とを組み合わせたサブナノ粒子法とを新たに開発した。これら手法を用いて引き続きサブナノ粒子合成の合成を行う。 初年度では金を構成元素とするサブナノ粒子のデンドリマー鋳型合成に成功した(molecules2022)。そこで今後はこの手法を発展させることで異種金属の精密配合を行う。1原子の導入から検討し、複数元素を配合したクラスター合成を行う。 機能解明は引き続き電気化学触媒機能およびガス化学反応触媒機能を中心に検討する。基質との反応メカニズムについて中間体の単離や理論計算を駆使して検討する。特に配合比率を変化させた際の活性変化はメカニズム解明に対する重要な知見であり、触媒機能と電子状態変化との関係を調べることで、機能発現のコアとなる局所構造の提案へと繋げる予定である。上記触媒機能に加え、発光特性や磁気特性についても検討する。サブナノ粒子の高密度での担体担持手法を開拓しており、これにより様々な基礎物性測定が可能となった。これを利用して研究を展開する。 サブナノ粒子の構造解析は引き続き透過型電子顕微鏡を用いて行う。ガリウムと白金の配合したサブナノ粒子は、STEMで観察した際の原子のコントラスト差が大きいために、それぞれの元素を識別できることが明らかとなった。これを利用することで、合金の局所構造についての情報を取得し、物性や機能との関係性を解明していく予定である。
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