研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04528
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
芹澤 武 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30284904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | セルロース / 酵素合成 / 自己集合化 / 水和構造 / バイオ機能材料 / 分子集合体 / バイオ機能 / 水圏機能材料 |
研究開始時の研究の概要 |
2022年度は、望みの機能性分子や高分子が組み込まれたセルロースからなる集合体を構築するために、反応性基をもつ集合体をあらかじめ酵素合成し、それらに機能性分子や高分子を共有結合により複合化する合成手法(セルロース系分子集合体のポスト機能化)を新たに開拓する。2023年度は、生体類似環境における集合体の分散・構造安定性、タンパク質吸着性、細胞毒性、炎症性などを評価し、これら生体適合性と水和構造との相関について検討する。その後、水圏バイオ機能材料の構築について検討する。
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研究実績の概要 |
「セルロース系分子集合体の多様化と水和構造解析」を実施した。望みの機能性分子や高分子が組み込まれたセルロースからなる集合体を構築するために、反応性基をもつ集合体を酵素合成した。酵素には、水溶性セルロースの加リン酸分解酵素であるセロデキストリンホスホリラーゼを用いた。得られた集合体に機能性分子や高分子を共有結合により複合化する手法(セルロース系分子集合体のポスト機能化)をあらたに構築した。化学構造が明確で集合構造が制御された様々な集合体の水和構造を示差走査熱量測定により解析した。集合体を構成するセルロース分子の化学構造の違いにより、不凍水量や中間水量が異なることを見出した。これらの水和状態はリン酸緩衝成分の有無によって変化することが分かった。集合体フィルムの対水接触角や、集合体の1-オクタノール/水二相分配によっても集合体と水との相互作用の違いを明らかにした。一方で、集合体を構成するセルロース分子の化学構造によって、タンパク質の吸着性が異なることを見出した。例えば、片末端に直鎖状のアルキル基をもつセルロースオリゴマーからなる二次元状集合体について、アルキル基の長さを変化させて様々なタンパク質の吸着を評価した結果、ブチル基をもつ集合体にはタンパク質が吸着しないのに対し、ヘキシル基をもつと途端にタンパク質が吸着することが分かった。示差走査熱量測定により解析した、両集合体の水和状態にそれほど大きな違いは観察されないものの、1-オクタノール/水二相分配の結果が大きく異なり、前者は水相に、後者は1-オクタノール相にほぼすべての集合体が分配された。すなわち、後者の集合体にタンパク質が接近すると水を排除して疎水性相互作用が生じることが示唆された。このように、セルロース系分子集合体と水との相互作用が動的に変化しうる新たな知見を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な機能性分子や高分子を片末端にもつセルロース分子からなる集合体を構築することに成功するとともに、集合体を構成するセルロース分子の化学構造の違いにより、水との相互作用が変化することを見出した。集合体のさらなる多様化や、分子レベルでの水和状態についての知見は十分とは言えないものの、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
領域内共同研究により、赤外分光法やテラヘルツ分光法などの各種分光法による水和状態解析を推進し、水との相互作用に関する分子レベルでの知見を拡充する。また、水圏におけるバイオ機能の発現メカニズムについて、水との相互作用の違いに注視しながら解明する。
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